ちはやふる -結び- (2018):映画短評
ちはやふる -結び- (2018)ライター4人の平均評価: 4
愛すべき端沢かるた部の面々たちの最後の激闘に胸アツ!
当然ながら、前2作を観た上での鑑賞がオススメで、その『上の句』&『下の句』を楽しんだ人であれば、今回も間違いなく楽しめるはず。
前2作は、千早(広瀬すず)・太一(野村周平)・新(新田真剣佑)という幼馴染3人の関係性と、端沢高校かるた部がチームとして成長していく姿が描かれていたが、今回は太一が主役といってもいい物語になっていて、野村が繊細な芝居で好演。
後半にはきちんと、愛すべき端沢かるた部の面々たちの活躍も描かれ、最終章としてバランスのいい仕上がりになっている。
また、曲者役を演じた賀来賢人もいい味を出していて、近年の個性派俳優的なポジションへの移行も板についてきた感がある。
目覚ましい成長を遂げた広瀬すずの軌跡に重なるヒロインの2年後
三部作というよりも、あれから2年後を描く後日譚。キャラクターが増え、演出的に弛緩した面は否めない。しかし恋愛エピソードに傾きすぎず、単に勝利を目指すのでもなく、精神的な高みに向かって上昇していく様が美しい。日本的な意匠を凝らし、撮影技術と音楽を駆使して心地よい画面を設計している。そして何より、90年代生まれの俳優たちの瑞々しい煌めきをカメラに収めたドキュメンタリー的要素が秀でており、数あるマンガ原作ものと一線を画す。とりわけ、猪突猛進タイプのヒロインが経験を重ね、人間関係の機微に触れ、道を究めようと邁進する姿は、アイドル的少女から本格女優へと目覚ましい成長を遂げた広瀬すずの軌跡に重なり合う。
変わらない魅力で戻ってきた広瀬すず
全方向にストレートに突っ走り、キラキラ輝きを放っていた『ちはやふる』前2作の広瀬すずが、しばらく間を置いた今作では、もしかして『怒り』や『三度目の殺人』の経験から、ちょっと印象が変わっているかも……と予感して向き合った。しかしその予想は、いい意味で裏切られ、前2作のキラキラが“まんま”キープされていて驚いた。役と物語にまっすぐに戻った証拠だろう。
競技かるたをスポ根映画の熱いノリで見せる演出は、もはやシリーズのお約束で、有無を言わさず観る者のテンションを上げる。卒業後の進路への苦悩や、思いを後輩に引き継ぐ心情もソツなく盛り込み、爽やかで、ちょっぴり切ない青春映画のサンプルのような後味。
まさに有終の美を飾る!
作品の仕上がり同様、クイーン=松岡茉優に喰われちゃった感のある前作『-下の句-』だったが、「最終章」となる今回は、展開ともに瑞沢高校かるた部が一丸となってリベンジマッチ! 前二作を観てなくとも、まったくかるたに興味ない新入部員・菫の目線で語られていく構成に、緊迫の試合シーンに挟まれる笑いといった演出の緩急。そして、太一をめぐる静かで、熱いドラマに釘付けになることだろう。さらには、完全にヒロイン・千早として戻ってきた広瀬すずに加え、新キャラ演じるアミューズ組(賀来賢人&清原果耶)の大健闘ぶりたるや! 小泉徳宏監督は、『-上の句-』を見事に超えて、堂々有終の美を飾ったといえるだろう。