デッドプール2 (2018):映画短評
デッドプール2 (2018)ライター8人の平均評価: 4.3
爆笑と涙の波状攻撃!無秩序で繋がるアウトロー達の疑似家族映画
マーベルの治外法権を存分に生かし、グリーン・ランタンの黒歴史を抱える主役がDCを揶揄する権限を発揮して、傑作が生まれた。有終の美を飾った盟友ウルヴァリンに執念深い対抗心を漲らせ、T2×X-MEN×アベンジャーズという最強アクションを酒の肴に、アナ雪までいじりまくって、まさかのファミリームービーを標榜する。なるほど無責任ヒーローの名をかなぐり捨て、差別と虐待をとことん憎んで怒れる少年を救うべく、グロいバトルとディープなパロディと下品なネタで笑わせて泣かせ、居場所を求めて血よりも濃い無秩序で繋がるアウトローどもは、カンヌもたじろぐ「ドン引き家族」かもしれない。嗚呼、『愛のイエントル』が恋しい。
ますますアップテンポで、笑って泣ける!
ふざけたヒーロー・アクションという前作の魅力を踏襲しつつそれをパワーアップさせようとする作り手の気概が感じられ、実際にパワーアップしているのだから、前作のファンとしては文句なし。
ドラマもジョークもアップテンポで、小ネタも敷き詰められており、退屈するヒマがない。『ジョン・ウィック』のD・リーチ監督の起用も成功しており、劇画調のアクションが映える。正しいことをしようとするヒーローの行動原理はブレておらず、彼とミュータント少年の友情のドラマはグっとくる。
スリルとスラップスティック、笑いと泣きのバランスがとれた稀有な娯楽作。X-MENとの関係の変化を含め、続きが楽しみになってくる。
口から先に生まれた男ライアン・レイノルズの口撃で笑死!?
多彩なジャンルをこなす器用な役者R・レイノルズの本領発揮はやはり、アクション・コメディと思わせる。無責任で不道徳なデッドプールは相変わらず口八丁手八丁で、笑いが絶えない。しかも前作のヒットを受けて予算が上がった上、『ジョン・ウィック』のデヴィッド・リーチ監督が加わったのでカーアクションや大規模なCG撮影で派手に盛り上がる。ほかにも名作パロディやヒット映画のディス、「えっ、あの人が?」な大物男優のチラリ出演など最初から最後まで楽しめる作りは非常に贅沢。忽那汐里ちゃんはじめ新キャストも多いが、ジョシュ・ブローリンの肉体の引き締めぶりが素晴らしく、おばか映画にも全力を尽くす役者ぶりにプチ感動。
おバカでお下品なノリはそのままに、今度はちょっぴり感動系?
『ジョン・ウィック』と『アトミック・ブロンド』の監督によるシリーズ第2弾は、ずばり「家族と仲間の絆」がテーマ。意外にも(?)脚本がしっかりとしているものだから、思いがけずホロッとさせられるシーンもあったりする。これは正直、予想外(笑)。
もちろん、下ネタ満載のアホなギャグや無駄にスプラッターなバイオレンスもてんこ盛りなのでご安心あれ。あちこちに散りばめられたサブカル系パロディを探すのも良し。『愛のイエントル』の主題歌ネタなんて、理解できる日本人いるんだろうか?と思うが(笑)。
あと、唐突に出てくる豪華ゲストたちも見逃せない。中でも、一瞬だけ顔を出すあの人、面白すぎてズッコケました。
今回もぶっ飛ばしてくれます
2回目となると最初の新鮮さはなくなるのではと心配していたが、その分、出だしからいきなりぶっ飛ばしてくれた。ウルヴァリンがらみはもちろん、「スター・ウォーズ」から「ターミネーター」、はては「氷の微笑」まで、映画やポップカルチャーにまつわるジョークがノンストップで展開。その上、ちゃんと感動ポイントもある。サプライズのカメオもあるので、一瞬たりとも目を離さないように。スーパーヒーロー映画はありすぎるほどあるけれども、こんなに笑わせてくれるのはこれだけ。その広い意味での新鮮さは、嬉しいことに、ちゃんとキープされている。
いちばん楽しんでるのはレイノルズ本人かも?
前作のノリを加熱させた予告編や、ベッカムやセリーヌ・ディオンとの豪華特別映像を連発し、本編を見る前から期待感を煽れるだけ煽っておいて、しかも本編を見終わった後に満足感を与えてくれるというのは、それだけでもう"偉業"。監督は前作とは別人だが、映画のノリは変わらない。このシリーズは、デッドプールというキャラクターを愉しむ作品であり、それを描くのは前作と同じ脚本の3人、「ゾンビランド」の脚本コンビと主演のライアン・レイノルズなのだ。加えて、映画ネタとアメコミヒーローネタのジョークをかなり大幅に増量。エンドクレジット後のギャグを筆頭に、レイノルズ本人がいちばん楽しんでいるように見えるのがいい。
こっちのジョシュ・ブローリンも強いぞ!
「死侍」のネオンきらめく香港戦から始まる、無責任ヒーロー・デップー續集。未来からの暗殺者から暴走小僧を守るため、寄せ集めチームを結成する流れは、まさに『ターミネーター』×『ワイルド・スピード』なノリ。『セイ・エニシング』の名シーンの完コピで泣かせ、ケーブル演じるジョシュ・ブローリン相手にサノスねたも飛び出すなど、お約束のパロディ&メタ構造が止まらない。さらに、ムダ遣いなカメオ出演など、『LOGAN/ローガン』でハードルが跳ね上がったオトナ向けマーベルの先駆けの意地を見せつける。『キングスマン』同様、前作を超える衝撃はないが、監督が代わっても、ここまで前作ノリを踏襲できたことは高評価したい。
独自の魅力を崩すことなく、斜め上を行く展開と演出
予想以上にダーク&シビアな展開も用意され、おちゃらけ感が先行していたキャライメージをいきなり原点に戻す。1作目も物語はかなり深刻だったことを思い出し、状況の「暗さ」とノリの「軽さ」の絶妙ケミストリーが、俺ちゃんの魅力だと再認識。
パトリック・スチュワートやライアン・レイノルズなど、現実の名前が言及されるメタフィクション化の加速は心地よく、中学生あたりが最も素直に歓迎するシモネタやグロさも、予算アップで広がった世界の中でおざなりになっていない。ムードを転調させる続編ではなく、ルールを遵守した成功例だ。脚本の余裕によって確実に増えたのは、過去の映画などからの絶妙な引用。そして感動を誘う演出か。