ギャングース (2018):映画短評
ギャングース (2018)ライター3人の平均評価: 4.3
キャスティングの妙が光る、痛快青春アクション
同じ裏稼業が舞台の『闇金ウシジマくん』シリーズに比べ、ヘヴィさに欠ける印象も受けるが、難しいことを考えず“タタキ=強盗”に軸を置いた青春アクションとして観ると、同じトリオ映画だった入江監督の前作『ビジランテ』より、しっかり届く作品に仕上がった。とにかく“明らかに犯罪者”ながら、観客に感情移入させるという難易度の高い主人公に、この3人をキャスティングしたのは見事。また、そこまで出番は多くないものの、一味違うMIYAVI演じる首領や『ウシジマくん』では巻き込まれる側だった林遣都演じる情報屋も、いいスパイスに。ただ、女優陣もなかなかだけに、(カットされたことによる)中途半端感は悔やまれる。
日陰に咲く花のたくましさを感じる青春アクション
半グレ集団と対決する3人組の話だが、社会からはみ出した状態で生きざるを得ない青年3人のサバイバルは物悲しくも痛快で、日陰に咲く花のたくましさを感じさせた! 原作者がルポライターということもあり、キャラ設定や犯罪ディテールがかなりリアルに思えた。特に特殊詐欺に関わる受け子の巧妙な手法にうっとり。主演3人のコンビネーションは抜群で、特に目を引いたのが加藤諒の熱演。顔立ちが個性的すぎて役を選ぶタイプの役者だが、心に深い傷を負いつつも明るいカズキは彼しかいないと思わせるハマリ役。サイコパスっぽい敵役のMIYAVIやヤンキー臭漂う女性が似合う篠田麻里子はじめ、配役も素晴らしかった。
間違いなく2018年を代表する日本映画のひとつ
前作『ビジランテ』で衰退し腐敗する地方社会の闇に切り込んだ入江悠監督が、今回はアクション満載の青春アウトロー映画のフォーマットを用いて若者の貧困問題に真正面から取り組む。格差の拡大によって貧困が固定化し、自己責任論のもとで弱者が切り捨てられる現代日本。生まれ育った境遇のせいでスタート地点にすら立つことを許されない3人の若者が、生き馬の目を抜く犯罪の世界で一発逆転の大勝負に出る…というわけだ。社会の最底辺で無視され虐げられる若者たちの怒りと悲しみに寄り添いつつ、痛快なエンターテインメント作品へと昇華させた入江監督の手腕は文句なしに見事。主演トリオの芝居も素晴らしい。終盤はもう大号泣の連続!