オンリー・ザ・ブレイブ (2017):映画短評
オンリー・ザ・ブレイブ (2017)ライター4人の平均評価: 3.8
古き良き男気映画の復権⁉ とにかくアツい
風向きを読み、放水ではなく、火で火を食い止める、その仕事ぶりの描写が丁寧で、まずそこに見入ってしまう。
森林消防は危険な仕事ゆえに訓練もハードで、さらに彼らには”ホットショット”という最前線消防隊の座という目標もある。そんな展開にスポ根ノリを宿らせつつケンカや友情、任務の際にも漏れる冗談など、男社会のグルーヴを伝える。『スラップショット』のような1970年代の男気映画を連想させるつくりが味。
職人肌の体調にふんするJ・ブローリンと、元ヤク中の新人M・テラーの主演コンビもいいが、粗暴だが“話してみるいいヤツ”的なキャラのT・キッチュも印象的な仕事ぶり。役者も味のある男ぞろいでイイ。
たまにはオールドスクールな米映画の男料理を
火は獣だ、という警句が『バックドラフト』にあったが、本作でも同様の喩えが出てくる。だがその荒れ狂う野性味はまた別種の怖さだ。シカゴを舞台に都市型の建物火災を描いた先行作に対し、こちらはアリゾナの山火事。「火をもって火を制す」というやり方からしてアトラクションにはならぬ獰猛さ!
消防隊員はハードロックやカントリー音楽を愛する田舎の白人男たち。エリートチームにバカにされる屈辱を乗り越え、叩き上げの実力で英雄になる。『セッション』『ビニー』に続くマイルズ・テラーの青二才ぶりもいい。これもまた西部劇の遥かなヴァリエーションだろう。あるいは作業着としてのジーンズを思わせる頑丈で古風なアメリカ映画。
ブローリンとブリッジスのオヤジっぷりを堪能
「アベンジャーズ」のサノス役や、「デッドプール2」のケーブル役でジョシュ・ブローリンにシビれた新たなファンに、彼の特殊メイクなしの演技を味わうチャンス到来。ブローリンが、いい感じに練れて熟成期に入ったオヤジを演じ、すでに完熟期のオヤジを演じるジェフ・ブリッジス(こちらも今や「キングスマン2」のステイツマンのリーダー役でおなじみ)に若造扱いされたりもする。このオヤジたちのシブい味が堪能できる。
基本は実話に基づく消防士たちの物語。だが、彼らを英雄として美化するのではなく、どこにでもいそうな人間たちとして描く。彼らがカッコイイ台詞を言ったりせずに、ただ仲間たちと仕事に取り組んでいく姿がいい。
芸達者なキャストとベタな演出で魅せる
ガチなSFマニアである映像派、ジョセフ・コシンスキー監督が、ここまで体育会系ノリかつ、コテコテの人間ドラマを描いたことに驚きだ。もちろん、今度はシゴかれて当然なチャラ男役のマイルズ・テイラーを筆頭に、ここまで芸達者なキャストが揃ったことも勝因のひとつ。軍隊のような訓練シーンに、放水でなく、迎え火で鎮火させるといった森林消防にテクに魅了されるなか、ジェフ・ブリッジズが出てくるだけで画面が引き締まるのだから。『バックドラフト』超えとは言い難いが、危険な仕事に立ち向かう男たちを待つ女たちの苦悩と葛藤も描かれており、死亡フラグが立ちまくった後に起こるクライマックスのインパクトは、かなりのモノである。