ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷 (2018):映画短評
ウィンチェスターハウス アメリカで最も呪われた屋敷 (2018)ライター5人の平均評価: 3.4
実話ベースゆえに怖いアメリカン・ゴシック
自社の銃で命を落とした人の霊を慰めるため、いつまでも部屋が増築され続ける大邸宅。そんな実話を基にしているというだけで、ホラーとしての面白さは約束されたようなもの。
ゾンビや吸血鬼、SF、そして『ソウ』シリーズ最新作と、多彩なスリラーを撮ってきたスピエリッグ兄弟だが、オカルトに挑戦した本作ではゴシックな雰囲気を徹底。廊下や階段のビジュアルに加え、屋敷の俯瞰映像にも、なにかまがまがしいものを感じさせ、緊張を増幅させる。
しかしなんといっても圧倒的なのは喪服姿オンリーのH・ミレン。目力の効いた演技は、このジャンルでも凄みを感じさせる。『鬼教師ミセス・ティングル』以来の怪演。
大女優が引き受けたのも納得の、マジで怖い正統派オカルト映画
恐らく世界で最も有名な幽霊屋敷の一つ、ウィンチェスター・ハウスを舞台にしたオカルト映画。ストーリー自体はフィクションだが、屋敷の女主人サラ・ウィンチェスターは実在した人物。ウィンチェスター銃の犠牲となった人々の怨霊が集まるというのは、銃社会アメリカならではの呪いだと言えよう。
派手なスプラッター描写こそ殆どないものの、ジワジワと恐怖を盛り上げていく風格のある演出は、『チェンジリング』や『たたり』を彷彿とさせるオカルト映画の王道的趣き。さすが、大女優ヘレン・ミレンが主演を引き受けただけある。一見すると地味だが、実はかなり怖い映画だ。
ヘレン・ミレンより"家"が主役。正攻法の幽霊屋敷ホラー
さすが、「アンデッド」で長編デビューしたスピリエッグ兄弟。出演者に演技派2人、「クイーン」のオスカー女優ヘレン・ミレンと「マッドバウンド 哀しき友情」が各種映画賞で注目を集めたジェイソン・クラークを据え、モチーフは銃を巡る暗黒の歴史を背負う実在の幽霊屋敷ウィンチェスターハウスとくれば、さぞや重厚な心理劇が展開するだろうと思いきや、まったくそんなことはなく、幽霊屋敷ホラーの伝統をまっすぐ受け継ぐ、正統派ホラーに仕上げてみせる。ただし、映像は格調高くして荘厳。撮影は「デイブレイカー」から監督兄弟と組んできたベン・ノット。増築を繰り返す古い屋敷の、あらゆる場所に生じる様々な影を映し出す。
面白設定を活かしきれず!
あのウィンチェスター銃で資産を築いた一族に、さまざまな内装の部屋を増築しまくる謎。そして、やっぱりおかしい未亡人を演じるヘレン・ミレン。これだけ面白い要素が揃っていながら、量産されるオカルトホラーから抜きん出ていないのは、どれもが中途半端に終わっているから。特に予算の都合からか、500もあるといわれた部屋が登場しなさすぎるのは勿体ない。ジェームズ・ワンに続けとばかり、今回抜擢されたスピエリッグ・ブラザーズだが、イタリアンホラーな少年の描写は悪くはないが、主人公の精神科医の設定などはありきたり。ハリウッドシステムにハマり、どんどん“らしさ”が失われているのが丸わかりで、今後が不安になる一方だ。
政治的にはタイムリーだが、ホラーとしては物足りない
いわゆるお化け屋敷の話だが、その家の持ち主は、銃を作る会社のオーナー一家。アメリカで銃規制への声が強まる今だけに、ホラー映画にしては、そこは思いがけなく政治的で、おもしろい要素だ。しかし、こういう映画を見る時は、思いきり怖がらせてもらいたいもの。その意味では、やや物足りない。怖いシーンはちゃんと怖いのだけれども、前にも見たことがあるようなものだし、数もあまりないのである。100部屋くらいあるという奇妙な大屋敷の様子も、もっと描写されてよかったように思う。