皇帝ペンギン ただいま (2017):映画短評
皇帝ペンギン ただいま (2017)ライター3人の平均評価: 3
皇帝ペンギンたちの今を捉えたアップデート版
アカデミー長編ドキュメンタリー賞にも輝いた『皇帝ペンギン』の12年ぶりとなる新作。前回と同じように、丸くてモコモコとしたキュートなペンギンたちの過酷な生態が記録されていく。なので、既視感を覚えるようなシーンが少なくないことは否定できないだろう。
その一方、今回はペンギンの親目線で見た子育ての苦労に加え、ヒナの視点に立った成長サバイバルの厳しさも描かれ、地球温暖化による生活環境の変化にも言及する。リュック・ジャケ監督は日本未公開の前作で南極における地球温暖化の影響を取り上げたが、そこから本作へ繋がっている部分もあるはずだ。作られるべくして作られたアップデート版と言えるかもしれない。
“可愛い”を守るためにも地球温暖化を防ごう!
皇帝ペンギンの不思議な生態を広く周知した続編には、卵から孵ったヒナが独り立ちするまでも描かれる。食料を持ち帰る母親を待ち続けるヒナには危険がいっぱいで、外敵に食べられたり、餓死したり、凍死したり……。自然界における種の存続の掟が目に見える形で伝わる。また温暖化でコロニーが減少していることも語られ、生態系の変化によって絶滅危惧種となった彼らの未来が暗いこともわかる。灰色の産毛に覆われたヒナの可愛さと、現実の厳しさの対比が実に切ない。ジャケ監督の思うツボかもしれないが、この可愛い動物を守るためにも地球温暖化を防ごうという気持ちになった。技術の進歩で、前作よりもシャープになった映像美も必見だ。
またまた癒されまくり! しかしその背後には暗雲も…
ドローンを使った南極の大自然や、水中カメラを駆使したペンギンたちの泳ぎなど、13年前の『皇帝ペンギン』からのバージョンアップが存分に感じられる。ただ、過酷な子育てなど彼らの生態は前作とそれほど変化ないので、前作を反復したい人、そして前作を観ていない人に向けた作品かもしれない。少なくとも、つぶらな瞳や羽毛に、尋常ではないレベルで癒される。
しかし作品の背後に潜むのは、ここ数年で激変する環境である。南極で降らないはずの雨が降ることで、雨に濡れたペンギンのヒナは体温調節できず、8割が命をおとすという。地球温暖化の影響を考えながら今作を観ると、子ペンギンたちの運命がより切実に胸に迫ってくるはずだ。