パパはわるものチャンピオン (2018):映画短評
パパはわるものチャンピオン (2018)ライター2人の平均評価: 3
主人公とシンクロする棚橋の雄姿に熱いものがこみ上げる
7年前に刊行された絵本原作のドラゴンジョージのモデルだった棚橋弘至が、今回の映画化では主人公とはいえ、ヒールのゴキブリマスクを演じるとは、時の流れは恐ろしいもの。だが、不屈のエースとして、良き父親として棚橋の現状が、この物語とシンクロする憎らしい演出もあり、熱いものがこみ上げてくる。もちろん、新日全面協力だけに、試合シーンのクオリティはかなり高く、サブキャラのなかでは仲里依紗演じるプ女子の編集者がいいアクセントに。そんな大人の世界と子供の世界をキッチリ描いていることもあり、『お父さんのバックドロップ』の上を行くファミリー向け映画に仕上がっている。
子どもはわかってくれない、わけじゃない
原作が絵本とは思えないくらいに深い人間ドラマになっている快作。パパが悪役レスラーと知って悩む翔太と愛する仕事を息子に理解してもらいたい父親・孝志それぞれの葛藤の描き方は定型的だが、監督は観客層を考えてあえてわかりやすさを選択したのだろう。明快で、テンポもいい。間接的に父子をつなぐ触媒となるプロレス女子の存在も心地いい笑いを生んでいるし、仲里依紗は実にチャーミング。しかし、もっとも素晴らしいのは、孝志役の棚橋弘至だ。演技は巧みとはいえないが、口下手な設定なので無問題。言葉にせずとも伝わる本物の迫力と存在感は棚橋以外の配役は考えられないし、全身から息子への思いとプロレス愛が伝わってきて涙。