半世界 (2018):映画短評
半世界 (2018)ライター2人の平均評価: 4
バーニング 備長炭版
美しい景観を持つ地方都市を舞台にした3人というと、『大鹿村騒動記』を思い出すが、ジャン・ベッケル監督の『画家と庭師とカンパーニュ』との共通点も多い。『十三人の刺客』以降、クセの強い助演として評価されてきた稲垣吾郎だけに、疑問に思えた炭焼き職人役だったが、頑固で不器用なおっさんにしか見えない、というか覚悟を感じる芝居で魅了する。ほかにも芸達者揃いということもあり、独特な世界観に没入できるうえ、いきなりのヴァイオレンス描写や三角形などの印象的なセリフから醸し出される奇妙な空気感もいいスパイスに。どこか既視感もありながら、近年の阪本順治監督作では出色の出来といえるだろう。
どこかぎこちない作品の魅力とアラフォー男たちが重なる
グダグダな会話があるかと思えば、突如、アドレナリンが上がる演出が挿入されるなど、一筋縄でいかないムード。悲しみの底にいる人物が瞬間的に冷静になったり、キーポイントと思える小ネタが妙に浮いていたり……と、作品全体が雲をつかむような印象で、ひじょうに評価が難しい。
しかし、それも作り手の狙いのようで、こうしたどっちつかずの雰囲気が、主人公たちの立ち位置と一体化していると気づいた瞬間、過去の鎧を脱いでスッキリした感じの稲垣吾郎や、内に秘めた闇を解放しそうな長谷川博己が、作品世界に一気に溶け込む感覚をおぼえる。ラストシーンからは、世界は「全」でなく「半」でもいいのだと、温かなメッセージも受け止めた。