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クワイエット・プレイス (2018):映画短評

クワイエット・プレイス (2018)

2018年9月28日公開 90分

クワイエット・プレイス
(C) 2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

ライター7人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

相馬 学

恐怖演出はもちろん、アイデアも音響も物語も逸品!

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 音を立てたら怪生物に襲われる…というシンプルな設定。そんなサバイバルライフに、妊娠・出産という希望的、ある意味、絶望的な状況を加えたアイデアが、まず面白い。

 そんな物語だから静寂の多い映画だが、音響の設計がとにかく素晴らしい。聴覚に集中を要求する体験ゆえ、床の軋みや風音にさえ、見ていて敏感になってしまう。アカデミー賞の音響部門に絡んでくるのでは。

 スリラーのスタイルを踏まえながら、家族のドラマに仕立て上げたJ・クランシスキーの丁寧な演出もさることながら、その演技も光る。しかし、誰よりの健闘はヒロイン、E・ブラントだろう。陣痛から出産までのタフな演技には、こちらも力が入ってしまった。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

家族ドラマとしても秀逸なサバイバル・ホラー

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 物音に反応して人間を襲う正体不明の“アレ”によって、人類が滅亡の危機に瀕した世界。とある一家による決死のサバイバルを描いたホラー映画だ。Amazonドラマ『ジャック・ライアン』でも注目のジョン・クラシンスキーが監督・脚本・主演を務め、愛妻エミリー・ブラントが共演している。
 ちょっとでも音を立てたらアウト!という設定は『ドント・ブリーズ』的だが、なにしろこちらは相手が人間じゃないし、家の中も外も逃げ場なし。常に緊張感が張り詰めた状態でストーリーが展開する。しかし最大の見どころは、希望の見えない世の中で親はどのようにして子供を守り育てるべきなのかというテーマ。家族ドラマとしても秀逸だ。

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山縣みどり

見ながら、口を押さえている自分に気づくはず

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

音に反応する“何か”と対決するアボット一家のサバイバルを描くSFホラーは、最初から最後まで一気呵成に見せるパワーに満ちた傑作。幼子が襲撃されるショッキングな冒頭で興味を引き、壁に貼られた新聞記事や家長リーが焚く狼煙といった形で世界状況を完結に説明。日常に潜む小さな危機を描きながら、一家に迫る脅威への恐怖を煽る演出が素晴らしい。登場人物が声を出しそうな場面で何度、自分の口を押さえたか。“何か”の小出しもスリリングだし、子を思う親の愛情が伝わってくる場面では涙。TVシリーズ『The Office』時代は木偶の坊キャラかと思っていたJ・クラシンスキーの才能がついに開花した。

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平沢 薫

次の恐怖を予測させるからドキドキが止まらない

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 一難去ってまた一難が続いていく。アクシデントの連鎖が、滑らかで途切れない。問題が起きる前から、問題の原因となるものが画面に登場して観客の注意を引き、これが後から問題になるのではないかと思わせて、その時点から観客のハラハラドキドキが始まる。そういう脚本になっているのだ。巧い。そのサスペンスの連鎖の中に、人間の感情が自然に浮かび上がってくる。感情表現面でも"音を出せないので言葉が使えない"という設定が効果的。親と子、姉と弟、夫と妻、それぞれの気持ちの通い合いが、言葉ではなく行動で表現されて、言葉以上に胸に響く。
 この脚本&監督トリオによる続編も企画進行中だが、別の新作がもっと見たい。

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くれい響

世界中が『ドント・ブリーズ』!

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

ある意味、『カメラを止めるな!』にも通じるアイデア勝負&身内感満載の一本。世界中が『ドント・ブリーズ』な状況下、至るところに散りばめられた“鳴りモノフラグ”にニヤニヤしながらも、たとえ空腹だろうが、お腹を鳴らせないほどの暗闇演出の巧さは、お見事。そして、ロマンチックかつ夫婦愛が詰まった美しいクライマックス。実生活での妻(エミリー・ブラント)相手に、ここまで潔くやってくれると、逆に気持ちいいぐらいだ。怪物の正体を含め、いろいろと謎だらけな点や、90分という緊張感が持続する上映時間など、これぞホントに観たかった『クローバーフィールド』の続編のような気がしないでもない。

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斉藤 博昭

静けさに、どんどん感覚が研ぎ澄まされる新たなホラーの味わい

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

音に反応する敵に対し、ひたすら音を立てないでサバイヴするという単純明快なルールは、『ドント・ブリーズ』とも似ているが、今作は舞台が室外にも広かるので、さまざまなスリルが伴い、より劇的で恐ろしい。セリフは最低限。それゆえに観客側も余計な方向へ意識がそらされず、主人公一家と同じく、精神が研ぎ澄まされていく感覚を味わえる。その感覚で観ていると、たとえば「痛みで叫びたいのを必死でこらえる」なんていう登場人物の忍耐力と強烈に同化できるのだ。ホラー映画としての「体感度」は最上レベルだろう。子役2人の演技力も賞賛に値し、とくに胸の内に意思を秘め、どこか達観したような長女には、作品と同じくらい畏怖をおぼえた。

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猿渡 由紀

怖さ満点、そして家族愛に涙

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

目は見えないが音に反応して襲うクリーチャーに人類が脅かされる時代。そのあたりの事情をくどくど説明することなく、観客をまっすぐにその世界に飛び込ませるのが、まず、とてもいい。クリーチャーは、とくに映画の最初では遠目にしか見えないのだが、その時点でも十分、恐ろしさを感じさせる。そんな中でも生きるためには外に食べ物を取りに行かなくてはいけないし、エミリー・ブラント演じる母は臨月。とにかくはらはらさせられっぱなしなのだ。さらに、家族愛の要素がある。それは時に涙を流してしまうほど強力で、この映画を際立ったものにしていると言って間違いない。 “監督”クラシンスキーのこれからが楽しみだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
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