テルマ (2017):映画短評
テルマ (2017)ライター2人の平均評価: 4.5
リピートすればさらに唸る! 少女スリラーの傑作
2018年の日本公開の作品では、『RAW 少女のめざめ』に匹敵する、恐ろしくよくできた”新女子大生の新生活”スリラー。
ヒロインのめぐるミステリーで見る者の興味を引き寄せ、エロティシズムと恐怖を振りまきながら展開するドラマ。衝撃的な展開はもちろん、氷上や雪景色、俯瞰ショットなど、映像の一瞬一瞬にドキッとさせられ、ラース・フォン・トリアーの甥っ子ヨアキムの才腕に見惚れてしまった。
単に怖さを味わっても面白いが、少女が自我を確立するまでの成長ドラマとしても成立しているのも見事。ティテールの巧みさ確認することを含めて、一度見たら、違う角度からもう一度見てみることをおススメしたい。
冷たく静かな世界で、少女の何かが目覚める
主人公が幼い頃から彼女の内部に在り、しかし両親によってずっとその存在を否定するよう仕向けられてきたあるものが、彼女が実家を離れたことを契機に、少しずつ出現し始める。それは一体何なのか。と、物語の基本は定番だが、それが描かれる世界の冷えた大気と静寂は、この映画独自の味わい。
氷の張る湖、雪の降り積もる森。窓のガラスさえ冷たい。その冷えた世界の中で、湖、プール、浴槽と、"水"のモチーフがループしていく。その冷気の中で、少女の内部から出現しようとするものが持つ熱が際立つ。
そして、主人公がその何かの正体を知ったときに到達する場所は、定番を度外視したもの。最後の彼女の眼差しが冷たく熱い。