カツベン! (2019):映画短評
カツベン! (2019)ライター4人の平均評価: 3.5
成田凌、イケメン&イケボ最強説
ブレイク前、『君の名は。』のテッシー役で、いい味出してた成田凌が、さらにイケボを武器に、座長を務める本作。まるで、朝ドラヒロインのような可憐な黒島結菜に、銭形警部からブルース・リーと化す竹中…じゃなくて、竹野内豊らのほか、おなじみの常連組も登場し、いかにも周防正行監督作らしい“意外なお仕事映画”に仕上がっている。それだけに、偽物から本物へと変貌を遂げていく主人公の成長ドラマにカタルシスを感じられないのが悔やまれる。また、やけにクドいタンスねたや、クライマックスのドタバタ劇が、牧歌的でユルいのも事実。そんな古き良きテイストをどう捉えるかで、評価は変わってくるだろう。
弁士役キャストの、美しく、堂々とした語り口に引き込まれる
映画黎明期、活動弁士=カツベンが、どのように作品の魅力を伝えていたか。その仕事ぶりを知るうえで、教科書のような誠実さが伝わる作品。成田凌、永瀬正敏、高良健吾のメイン3弁士のキャストは、みっちりトレーニングを積んだことを実感させる話術の巧みさで驚嘆させる。
作品全体のムードと流れ、共演陣の演技なども含めたコミカルな要素に、レトロな味わいが意識され、懐かしい映画を観ているような感覚もある。その懐かしさが心地いいか、物足りないかは、観る人それぞれかもしれない。
「映画が人生を変える」感動をハイレベルで期待しすぎたが、人間ドラマのポイント、映画と人々の関係には、エンタメらしい楽しさが意識されていた。
映画と映画を愛する人へのリスペクトが伝わる快作
スクリーンに登場するキャラクターが全く理解できない言語を話していても、なんとなく意味がわかる。それが映像のパワーだと思うが、活動弁士の口上でさらに面白くなったのだなと無声映画の時代に思いを馳せてしまった。映画を愛する青年の成長と興行黎明期ならではのドラマを重ねる構成もいい。またB・キートン風のドタバタやギャグや35mmフィルムで撮ったモノクロ無声映画など、全編を通して周防監督の映画への愛情とリスペクトが伝わってくる。弁士たちの個性あふれる声色も魅力的だし、特に成田凌のカツベンぶりは気合い十分! 彼はコメディでひと皮向けたようで、ノンノボーイの先輩である阿部寛みたいになれるかも。
映画へのラブレター
周防監督の映画への愛が溢れた作品。
『アーティスト』や『ヒューゴ』そしてターセム・シンの『落下の王国』などの映画黎明期の人々のどうしようもないワクワク感が映画から伝わってくる。
成田凌のカツベンも大健闘ですが、助演陣が皆活き活きとしていて楽しい。
妖艶な井上真央、小憎らしい音尾琢真、きざな高良健吾、やさぐれた永瀬正敏。
アクションパートのオーバアクトもサイレント映画を思わせる大仰さで笑いを誘います。
再現される過去の名作モドキもよいですが、エンドロールに『雄呂血』が使われていることで、映画がピシっと締まりました。