コンフィデンスマンJP (2019)：映画短評

今年も『プリンセス編』が待機中の人気シリーズの劇場版第1作。
なんといっても長澤まさみが“ダー子”とい最大の当たり役が得て、生き生きと暴れまわる姿が痛快です。
『コンフィデンスマンJP』は相手を徹底的に翻弄して、ごっそりとお宝をいただく場合と、それはそれとしてターゲットのトラウマや心の引っ掛かりをスッと取り除くパターンの2つがあります。
この劇場版一作目は、徹底的に前者。
最新作『プリンセス編』は後者になっているので、見比べてみるとさらに楽しみが深まるでしょう。

もともと映画サイズの話だったのではないか。
狙う金額といい、オサカナを釣り上げるために大仕掛けといい、ドラマでは無謀にすら感じた設定も、映画のマジックなら有りと笑って許せる範疇。
なにせ今回は天才恋愛詐欺師も登場し、モノだけでなく心まで奪おうとするのだ。
男女の機微に触れるシーンも随所に織り込まれ、これぞ役者の艶ある演技に感情を揺さぶられた観客の中には、まんまと騙された人も多いのでは。

新キャラクター・モナコの投入も効いている。
演じる織田梨沙のオンとオフのギャップと、小悪魔的な魅力はダー子の弟子、いや、大化けする可能性も。
運勢編では出番が少なく物足りなかったので、スピンオフを希望。

「ロマンス編」だけに、ダー子の元カレが登場するだけでなく、愛憎が交錯する劇場版。サブキャラの再登場以外にも、まどろっこしい展開が続いた後のドンデン返しなど、ドラマ版ファンを最優先した作りである。とはいえ、香港が舞台だけに、『香港パラダイス』『香港大夜総会 タッチ&マギー』のお祭りノリを感じさせ、トラックスーツやジャッキーちゃん（チェンじゃないよ！）以外も、ジョン・ウー風、ウォン・カーウァイ風、『インファナル・アフェア』風など、作り手の遊び心たっぷり。また、コメディエンヌ・長澤まさみのスゴさはもちろんだが、これまで不遇な扱いを受けていたとしか思えぬ織田梨沙が女優として開花！