ハイ・ライフ (2018):映画短評
ハイ・ライフ (2018)ライター2人の平均評価: 3.5
人間たちを極端にミニマムな環境に置く
長期滞在型の宇宙船、そこで行われる実験に志願した死刑囚たち、という設定はSF仕立てだが、おそらく監督の興味はSFにはない。本作は、そういう極端にミニマムな環境の中に人間たちを置いて、生きるという営みの単純化を試みる。宇宙船の中で、人々がやることは地球上と変わりなく、何かに参加したり何かを拒絶したりして、生きて、繁殖する。タイトル通り、地上からの高度が高い=ハイなだけの生活/命=ライフ。
音楽は「ネネットとボニ」などドゥニ監督映画の音楽を手がけてきた英国バンド、ティンダースティックスのスチュアート・A・ステイプルズ。エンドクレジットの曲は、ロバート・パティンソンが歌っている。
宇宙船内での欲望と禁欲の闘いは、胸がざわめく鮮烈描写も
9人のクルーが乗っていた宇宙船で、生き残ったのはただ一人。あとは彼の赤ん坊だけ。さて何が起こったのか……という、何やら「エイリアン」的な予感もはらむ設定だが、物語は人間の狂気と、種を残す本能に深くフォーカス。禁断の世界を垣間見る印象が強い。バイオレンスもなかなか強烈だが、それ以上に性欲処理描写がアート的ながらゾクゾクするレベル。『2001年宇宙の旅』『惑星ソラリス』あたりのレトロなデザインにならった宇宙船内にも美意識が感じられる。ブラックホールの登場や、船内と船外の境の状況など、不可解さ&ツッコミどころはあるものの、監督の描きたいテーマは伝わってくるし、良くも悪くも斬新な映像体験にはなる。