アナと雪の女王2 (2019):映画短評
アナと雪の女王2 (2019)ライター5人の平均評価: 3.8
同じことは二度やりませんという気魄が凄い。
エルサの秘密を自国の黒歴史に結び付けるという政治的物語は、ジェンダー論的な意味で歴史を変えた前作にも増して高度、それだけ観客も成長しているというのを信じてのことだろう。後ろ3分の2はずっとクライマックス、「第5のエレメント」にエルサが気づくまでの道行で歌われるテーマ曲はこれでもかとばかり盛り上げるし、一旦絶望したアナが自らの使命に鼓舞され再び立ち上がるまでの楽曲に“Let It Go”の音型を忍ばせるなどミュージカルとしての企みも効いている。ところで「水には記憶がある」という思想は北欧圏に遍在するものなのだろうか、ある不思議なエストニア映画でも雪だるまが語っていたのだが。
攻めの続編
メインキャラの過去や運命の源泉を描く続編というのはそれこそ『ゴッドファーザーpart2』や『スターウォーズ帝国の逆襲』と同じ構造。
そうやって物語を深堀りしながらも、ちゃんと子供の目線で判るようになっている。実は結構難しいことをやってのけている。
もっと安全策を取ることもできたと思いますが、なかなかどうして、攻めの一本です。『レット・イット・ゴー』はインストバージョンですら使わないという“お馴染みの”を封印して見せた、冒険にも★一票ですね。
アナとエルサがちょっと大人になった
1作よりもビッグで盛りだくさんになるのは、続編の基本。今作もまさにその例。舞台は精霊のいる神秘的な森や、過去へと拡大。アクション、ユーモアも1作目以上にたっぷり。とくにオラフは、お得意のギャグで、あちこちで笑わせてくれる。前回はあまり見せ場のなかったクリストフのチャーミングな場面も。ストーリーは1作目よりやや込み入っていて、もっと大人なメッセージが含まれている。1作目から3年が経っているという設定で、アナとエルサも、人生の次の段階に進んだということ。最後は、これからの彼女たちをますます応援したい気持ちになる。
エルサがさらに一歩、足を踏み出す
エルサが、さらに歩き出す。前作のエルサは自分を直視し肯定することで一歩前進したが、今回のエルサは、自分にも分からない何かに向かって進んでいくのだ。
そんなエルサを筆頭に、この続編はいろんな点で前作と同じところに留まっていない。ストーリーが前進、謎解き要素が加味される。サブキャラも前進、前作では何もしなかった感のあるクリストフも歩き出す。名曲たちも前進、登場人物それぞれが名曲を歌うのは前作と同じだが、今回はそれらの名曲たちが、エンドクレジットで人気ミュージシャンたちにカバーされて再登場。各曲とカバーするミュージシャンの組み合わせも楽しい。
本格派ミュージカルの堂々たる作り
「レリゴー」ほど強烈にリフレインする曲はないものの、前作以上に、曲の抑揚やドラマとの切り替えに細かくこだわった「ミュージカル形式」の演出が冴えまくり、1曲終わるごとにうっかり拍手したくなってしまう。クリストフのナンバーの映像など、ミュージカル的テンションの上げ方がパーフェクトだ。
さらに前作よりインパクトが強いのが、アナとエルサのアクション。特に新たな大冒険へ踏み出すエルサが繰り出すスーパーパワーは、もはやマーヴェルのヒーローたちをもしのぐ勢い。めくるめくダイナミズムに、美しすぎる雪と氷の一大アトラクションを観ているかのよう。オラフの役割はもはや名人芸。感動という点は続編らしく健闘レベルか。