スケート・キッチン (2018):映画短評
スケート・キッチン (2018)ライター3人の平均評価: 4.7
ガールズ・ガールズ カミーユと仲間たち
実在するガールズ・スケートクルーを起用したMiu Miuのショートフィルムを長編にアップデートし、リアルな青春ドラマとして仕上げた思わぬ拾いモノ! 確かに、ライフスタイルやファッションの切り取り方は、ラリー・クラーク&『KIDS/キッズ』ぽさもあるが、SNSありきのこのご時世にして、女性監督ならではの“女子あるある”が嘘偽りなく描かれる。さらに、メガネっコ・カミーユを演じるレイチェル・ヴィンベルクら、“全員サム・リー状態”の芸達者な彼女たちから目が離せなくなる。その存在感たるや、目玉であるジェイデン・スミスが霞んでしまうほどだ。まさに“女子版『ボーイズ・ボーイズ ケニーと仲間たち』”。
スケボーに青春を賭ける少女たちのガールズパワー映画
ニューヨークに実在する女の子だけのスケボー集団スケート・キッチンを題材に、10代ならではの不満や憤りを抱えた内気で繊細な少女カミーユが、同じように複雑な境遇のスケボー仲間たちとの出会いによって、自己を確立して自分の居場所を見つけていく。スケボーに情熱を賭ける若者たちの青春ドラマであると同時に、強い意志を持ったタフな若い女の子たちが互いを認め、共に手を取り合って「女はこうあるべきだ」という男社会の固定概念に挑んでいくガールズパワー映画でもある。ドキュメンタリー出身で、これが長編劇映画デビューとなったクリスタル・モーゼル監督の、瑞々しくも躍動感溢れる演出がとにかく素晴らしい。
21世紀のストリートを実感する
想像以上のいい映画! シスターフッドの『ロード・オブ・ドッグタウン』、NYの『ローラーガールズ・ダイアリー』――これだけでも上等な賛辞だが、本作ではあらゆる局面で男性側の無意識の性差別や、女性が感じる抑圧を鮮明にあぶり出す。基調は自由意志へのポジティヴな目線。この「悪ガキ」達は何をしてもあっけらかんと健康的だ。
ドキュメンタリー出身のC・モーゼル監督は異例の劇スタイルを取り、実際のスケート・キッチンのクルーが自分と≒の役柄を演じる。驚くほどみんな魅力的な「役者」。特に主演のレイチェル・ヴィンベルクは完璧な映画的ヒロイン。加えてフィクションの艶やかさを明確に付与するジェイデン・スミスにも拍手!