ポラロイド (2017):映画短評
ポラロイド (2017)ライター5人の平均評価: 3.2
怨念に実態があるから怖がりな人も大丈夫(多分)!
写った人が死ぬ! 『リング』のVHS並みの破壊力を持ったポラロイドカメラはなんと、昨年sacaiがコラボしたSX-70。登場した段階でかっこいいので、「壊されたらヤダな」という思いが強くなる。余計な考えが混じるので、小道具としては失敗かも。コンプレックスだらけの地味ヒロイン以外はキャラが立ってないが、無問題。終盤で登場する『ツイン・ピークス』のG・サブリスキーが不気味な存在感でホラー度を増してくれる。顔つきが本当に怖い! 精神的にジワジワくるのではなく、カメラに取り付いた怨念(?)が実体を持って人を襲うアクティブ系。ビビりの私はOKだが、サイコホラー好きは物足りないかも。
J-HORRORからの影響はかなり濃厚
リメイク版『チャイルド・プレイ』を手掛けたラース・クレヴバーグ監督の処女作。撮られた人間は必ず死ぬという、呪われたポラロイドカメラを偶然中古で手に入れた女子高生が、何も知らないまま仲間と記念写真を撮ってしまい、その呪いを解くためカメラの元の持ち主を探すことになる。ストーリー構成は完全に『リング』のバリエーション。呪いのルーツを遡っていくうち、封印された過去の忌まわしい出来事が浮かび上がるという展開を含め、全体的にJ-HORRORからの影響がかなり濃厚だ。それゆえ簡単に先読みできてしまうことは否めないものの、新人監督の長編デビュー作としては手堅い仕上がり。
ポラロイドのように真実が少しずつ姿を現わす
ビジュアル面、ストーリー面の両方で、小さなネタが少しずつ積み重ねられていく。その"見えなかったものが少しずつ現れてくる"という感じが、ポラロイド写真の被写体の出現の仕方とシンクロする。そうした作劇術が魅力。例えば、ポラロイドの中に映り込んだ影が、少しずつ動いていく。主人公の女の子の過去が少しずつ明らかになる。また、ビジュアルの表現には、ポラロイド写真というモチーフならではの演出もある。
出演者もこのジャンルのファン向けで「X-ファイル」のスキナー長官役ミッチ・ピレッジにニヤリ。「ツイン・ピークス」のローラ・パーマーの母親役グレイス・ザブリスキーは、今回も出てくるだけで怖い。
『ライト/オフ』との共通点多し
SNS投稿が全盛の昨今、あえてレトロなポラロイドカメラに目を点けたティーン・ホラー。『心霊写真』などに比べると、前半はパンチが足りなく、既視感ある展開が続くが、死んでいく順番がイレギュラーになり、醜い撮り合いが勃発。さらに、二転三転する謎解きもあるなど、中盤から後半にかけての展開は、確かに目を見張るものがある。謎のクリーチャー登場は、いかにもハリウッド的なためか、賛否も頷けるが、それによってメリハリが付いた感もアリ。短編から長編へという流れや、監督のスピード出世コースなど、いろいろと『ライト/オフ』に通じるものもあるため、ホラー好きならチェックしておきたい一本だ。
新チャッキー映画の新鋭の才腕に注目
俊英グレヴバーグがリメイク版『チャイルド・プレイ』に抜擢されたのは、本作の成功があったから。というワケで注目して見たが、なるほど、これは巧い。
カメラに撮られると命を落とすという設定は目新しくはないが、写真の中の気味の悪い一点にフォーカスしたり、影の存在に集中させたりなどの見せ方の工夫が光る。過去の事件の真相に迫るミステリーも気持ちをつかまずにおかない。
主人公が悪意もないまま事件を引き起こし、マズい立場に立たされてしまうのは『チャイルド・プレイ』との共通した展開。そのとまどいや焦りといった心理に肉薄している点もスリラーとしては効果的で、グレヴバーグ監督の才気をうかがわせる。