マーウェン (2018):映画短評
マーウェン (2018)ライター3人の平均評価: 3
動くフィギュアたちのディティール描写にクラクラ
アクション・フィギュアたちの戦いを描くジョー・ダンテ監督の「スモール・ソルジャーズ」で、フィギュアたちが箱の中から出るときに、いちいち手足を固定しているハリガネをほどく場面でクラクラした人は必見。本作の動くフィギュアの表現は、あれを思い出させる"あるある感"に満ちている。そのディティールの描写に圧倒されるのが快感。
人形が人間のように動き出すという映画はよくあるが、こちらは逆方向の変身なのがポイント。人気俳優が演じる人間たちが、主人公の作ったジオラマの町マーウェンに、アクション・フィギュアと化して出現する。それでいて主人公とフィギュアの関係はありがちなものにはなっていない。
ロバート・ゼメキスらしいヒューマニズムとユーモアが魅力
あの『フォレスト・ガンプ/一期一会』とも相通じる、ロバート・ゼメキスらしいヒューマニズムとユーモアの溢れる作品。集団リンチを受けて脳に障害を受けた男性が、空想の世界を通して現実と向き合っていく。ドキュメンタリー映画にもなった実話がベースだ。その空想の世界というのが、ジオラマで再現された第二次大戦下のベルギーの村マーウェン。自分自身に見立てた米兵フィギュアが、5人のバービー人形戦士に助けられ、残虐なナチスを蹴散らしていく。ストップモーション風のCGアニメは楽しいものの、主人公が暴力のトラウマを克服していく現実のドラマと、空想世界の戦争アドベンチャーが相乗効果を発揮しているかというと少々疑問。
テクノロジーが逆効果
理不尽な暴力のせいで心身に大きな傷を負った主人公は、今、以前のように絵を描くのでなく、人形を使ったインスタレーションを写真に撮る活動をしている。そんな彼のイマジネーションがモーションキャプチャー技術を使って見せられていくのだが、本来ストーリーを語る手助けであるべきそれが、むしろ映画の目的のようになっている。それらのシーンが多すぎ(映画の半分近くを占める)、何の映画を見ているのかわからなるのだ。テクノロジーに感心はさせられるのは一瞬で、その後はなんだか気持ち悪くなり、そのうち飽きる。不必要なお金をかけず、素直に語ったほうが、心に響く映画になったはずだ。