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サタデー・フィクション (2019):映画短評

サタデー・フィクション (2019)

2023年11月3日公開 126分

サタデー・フィクション
(C) YINGFILMS

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

ミルクマン斉藤

キモとなるのは横光利一の小説「上海」。

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

作品的には常に挑戦的、というか国家にケンカ売ってる感じがしなくもない中国インディ界の雄ロウ・イエだが、本作は第二次世界大戦直前の上海を舞台にしたオールスター・スパイ映画だ(もともと彼は上海生まれで、その地を舞台にすることが多い)。諜報戦にガン・アクション、そしてちょっとしたメタ構造。全編美しいモノクロ映像に複雑な群像劇を絡めたアーティスティックな映画になっている。正直、中盤以降の物語は整理がつかなくなってけっこうハチャメチャなんだけど、編集リズムとキャメラ・照明の美しさが際立ってどうでもよくなる。映画なんてそんなものさ。かつて「魔都」と呼ばれた上海マジックそのものだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

2019年の逸品がついに劇場公開

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

1941年12月、真珠湾攻撃に向かう一週間の上海を舞台とし、ロウ・イエ監督としては『パープル・バタフライ』(03年)の時代背景を受け継ぐスパイ物。モノクロームの美しい映像がスタンバーグの『間諜X27』『上海特急』等を彷彿とさせつつ、横光利一の『上海』を応用した劇中劇を巡る入れ子構造の巧緻な世界設計を見せる。

コン・リー扮するヒロインと、彼女に瓜二つというオダギリジョー扮する将校の亡き妻・美代子――さらにホァン・シャンリーも絡めた「運命の女」像はヒッチコックの『めまい』を換骨奪胎。中島歩、P・グレゴリーといった国際的な配役のアンサンブルも良く、史実を下敷きに蠱惑的なフィクションを創造している。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

1941年の上海、フィクションが重なり合う

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 1941年、太平洋戦争開戦直前の上海、周囲の状況から切り離され、欧米人が出入りする"孤島"と呼ばれた英仏租界。それがセットではなく、改修前の蘭心大戯院やキャセイ・ホテルなどの当時から残る建造物で撮影され、柔らかなモノクロ映像で描き出される。

 そこで紡がれる物語には、虚構性が幾重にも掛け合わされている。租界という、周囲とは別の法則を持つ世界。ヒロインは彼女自身であると同時に、女優であり、スパイでもある。さらに、彼女が出演する舞台のリハーサルが劇中劇として描かれ、舞台のセリフと同じ言葉が現実世界でも語られる。カメラは微妙に動き続けて、いつまでも静止せず、リアルと虚構の境界が揺れ動く。

この短評にはネタバレを含んでいます
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