人生、ただいま修行中 (2018):映画短評
人生、ただいま修行中 (2018)ライター2人の平均評価: 4
理想と現実の狭間で、あなたも私も修行中
ナレーションやインタビューを排除し、“観察”に徹する”フィリベール監督のドキュメンタリー演出は健在。そこで描かれるのは看護学校で学び、医療の最先端に飛び出そうとする若者たちの体験だ。
手洗い方法に始まり、注射器から気泡を抜く練習などの技術を教わり、研修では実際に患者に接する。死という現実に直面し、無力感を抱く者もおり、そんな看護師候補生たちの理想と現実が浮かび上がる。
理想と現実の間に置かれたとき、人間は考え、それによって成長する。そんな一コマ、一コマを丁寧に並べ、”気持ちはわかる”“わからないけど、自分も考えないと”と思わせる点が見事。邦題は劇中の若者たちにも、観客にも当てはまる。
看護士を目指す人々の奮闘と成長を“ありのまま”に
『パリ・ルーヴル美術館の秘密』や『ぼくの好きな先生』で有名なフランスのドキュメンタリー作家ニコラ・フィリベール。その久々の新作は、パリ郊外の看護学校で学ぶ、年齢も性別も人種も国籍も様々な生徒たちの日常を記録する。ナレーションや音楽などの作為的な演出は一切なし。どこまでも被写体と同じ目線で寄り添い、その“ありのまま”を映像に刻みつけていく姿勢は、昔から一貫したフィリベール監督のスタイルだ。そこが好き嫌いの大きな分岐点ではあるものの、看護士を目指して奮闘する生徒たちの喜びと苦悩、そして人間的な成長を、淡々とした日常風景から丹念に汲みあげていく監督の暖かな眼差しが印象深い。