犬鳴村 (2020):映画短評
犬鳴村 (2020)ライター3人の平均評価: 3.7
犬鳴”一族”のその後も見たくなる!
実在の心霊スポットから発想を広げ、土着的な怨霊を描く。清水崇監督にうってつけの題材で、ホラー好きとしては見ていて嬉しくなってくる。
地図から消えた村の悲劇に横溝正史モノのような一族の呪われた血のエピソードが絡み、オカルトで煮詰めたストーリーは、ミステリーを帯びて観る者の興味を強く引き寄せる。封鎖されたトンネルや、その先にある廃屋などの舞台装置のビジュアル的な不気味さも活きた。
恐怖に対峙するヒロイン、三吉彩花の熱演に加え、子役の危うげな存在感を引き出した演出はお見事。ハッピーなのかアンハッピーなのか不明瞭な、恐怖が尾を引く結末も印象的で、続編が見たくなる。
ネット黎明期の都市伝説を生々しい怪奇譚へと昇華させた佳作
かつてJホラー・ブームの重要な一翼を担いながらも、近年はいまひとつ精彩を欠いていた清水崇監督だが、これは久々のスマッシュヒットと呼べるだろう。インターネット黎明期に拡散された犬鳴村の都市伝説をベースに、日本古来の血筋や出自による偏見と差別を呪いの根源としつつ、その怨念が今日まで連綿と受け継がれる魑魅魍魎の世界に、SNSを通じて再びその排他性や閉鎖性が可視化されてきた現代日本社会の薄気味悪さがおのずと重なり、その生々しい恐怖に思わず戦慄する。あの伝説の怪作『犬神の悪霊(たたり)』を彷彿とさせる陰鬱な伝奇的ムードも、邦画カルトの殿堂たる往時の東映らしさへの回帰を如実に感じさせて嬉しい。
やっぱり、昭和臭漂うJホラー
九州在住ならおなじみ、日本屈指の心霊スポット「犬鳴トンネル」をモデルに、それにまつわる“呪われた電話ボックス”も登場するなど、じつは思い切った企画である。YouTuberによるフェイクドキュメンタリー的展開から始まり、金田一耕助が登場しそうな昭和臭漂う“血縁関係”や謎のわらべ歌といった、いかにも日本映画的なエピソードが描かれるなか、社会派であり、なんだかスゴい高島礼子(!)まで、かなり盛りだくさん。清水崇監督にしか撮れない作品かもしれないが、中田秀夫監督の『貞子』と同じく、どこか時代が止まってる感もアリ。つまり、Jホラーテイストを堪能したければ、特に問題なし。