ダウントン・アビー (2019):映画短評
ダウントン・アビー (2019)ライター3人の平均評価: 4.3
さらに続きが見たくなる映画版
貴族の館を舞台に移りゆく時代や人間模様を描いた人気TVシリーズの映画版は、さらなる続編を期待する出来栄え。聞き慣れた音楽で始まる冒頭から目が釘付けだし、ロイヤル・ビジットをめぐるダウントン邸の人々の活躍に胸踊る。女性が自立する時代の到来や王族も人間なのだと感じさせるゴシッピーな逸話など複数のサブプロットをきちんとまとめ上げたJ・フェローズの筆力はさすが。彼自身が貴族なので、真実味が加味される。ヴァイオレット様やレディ・メアリーといったお馴染みキャラの人となりを踏まえた成長ぶりに頰が緩み、嫌味男バローズをめぐる話ではLGBTQが辿った茨の道を考えさせられた。TVシリーズの復活が待たれる!
TVシリーズの映画化はこうでなくっちゃ
人気TVシリーズの映画化のお手本のような劇場版。TV版とクリエイターも出演者も同じで、舞台も同じ、やっていることも同じ。TV版のファンが見たいものをちゃんと見せてくれる。そのうえで、せっかくなので大画面に映えるシーンをプラス。冒頭には少し仕掛けのある映像的演出があり、貴族の邸宅での舞踏会の華やかさも映画版の製作費ならではだろう。そして幾つか問題が起きるが、やがて解決されて、みんなが幸福になる気持ちよさもTV版と同じ。
それにつけても、本作の魅力はキャラクター描写だと痛感。登場人物たちのこれまでを知っているほど、面白さが倍増する。これもTVの映画版として正しいのでは。
ファンサービス満点。願ったものが全部詰まっている
5つ星評価は、あくまでテレビ版のファンであることが前提。テレビ版を見ていなかった人には、やたらと人が出てくる映画としか映らないかも。とにかく、2時間でこれだけのキャラクターみんなにちゃんと見せ場を作り、笑いも、感動も、意地悪さやかけひきもちゃんと見せているのは、すごい。彼らは成長もしているし、一方であいかわらずでもある。最後には感動があり、思わぬロマンスが生まれたりも。一通の手紙が汽車、郵便局、配達員を通じて運ばれていき、ついに届くところで盛り上がる音楽とともにダウントンの建物が出てくる出だしからして、心憎い。