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デッド・ドント・ダイ (2019):映画短評

デッド・ドント・ダイ (2019)

2020年6月5日公開 104分

デッド・ドント・ダイ
Credit : Abbot Genser / Focus Features (C) 2019 Image Eleven Productions, Inc. (C) 2019 Image Eleven Productions, Inc. All Rights Reserved.

ライター8人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.8

村松 健太郎

絶妙な居心地の悪さ

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

この映画を出品されたカンヌも困ったことでしょう。
アメリカの永遠のインディペンデント作家ジム・ジャームッシュの最新作ははメタ的要素をふんだんに盛り込んだゾンビコメディ。
中心にいるのがビル・マーレイとアダム・ドライバーという長身の二人組。この二人、他の作品でもそうですが、いつも微妙に居心地の悪そうな顔をしていて、それをまぁなんとかかんとかやりくりしている感じがあるのですが、ジャームッシュはそこを隠そうとせず、物語全体に絶妙な居心地の悪さを展開しています。そして、ティルダ・スウィントン。とうとう彼女はとんでもない境地の存在となりました。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

キャストの魅力と同じく、すっとぼけた感じで観やすいゾンビ映画

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

ここ数年、あらゆるパターンで飽和状態のゾンビものの中で、今作はゾンビが生前の物欲にこだわる設定が楽しい。では、そこがアイロニーかと言えば、そうでもない。マニアを意識した小ネタは「スター・ウォーズ」「ロード・オブ・ザ・リング」のようにメジャー感があるし、残虐描写やブラックな笑いもインパクトは回避。ビル・マーレイ、アダム・ドライバーという、とぼけた味が得意な俳優に、とぼけたことを演(や)らせる。要するに、過去のゾンビ映画のエッセンスを大量に取り込みつつ、マイルドで観やすい印象。世の中がギスギスしたこの時期に、ゾンビ映画が一服の清涼剤に…と、ジャームッシュも意識しなかったであろう不思議な効果も!?

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

のんびりと緩めに楽しめるジャームッシュ流ゾンビ映画

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 ジム・ジャームッシュのゾンビ映画?と意外に思う人もいるかもしれないが、しかしもともと古典的なホラー映画への造詣が深く、『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』なるヴァンパイア映画も撮っている人なので不思議はないだろう。ある日突然、平凡な田舎町でゾンビ・パンデミックが発生するという筋立てはまさにジャンルの王道。現代社会の資本主義や消費文化への風刺を込めた不条理なユーモアが笑いを誘うものの、全体的にこれといって特筆すべき目新しさはない。むしろ、随所に散りばめられたロメロ作品へのオマージュ(『NOTLD』の全裸ゾンビも登場)や、意外な人が意外な役で出てくる豪華キャストの顔ぶれなどを楽しむべし。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

ジャームッシュ組かくし芸大会

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

ゾンビ映画といえども、どこを切ってもジャームッシュ汁! ロメロ監督のオマージュ的に、思い出のモノに依存するゾンビたちが登場するなか、トップを飾るのがイギー・ポップとサラ・ドライバー演じる「コーヒー・ゾンビ」というブレなさにニヤニヤ。やたら流れるテーマ曲にツッコみ、窮地に追い込まれ脚本にツッコむ、主人公の脱力系漫才にニヤニヤ。そして、“ひとり『キル・ビル』<<女版『ゴースト・ドッグ』感”ハンパないティルダ・スウィントンにニヤニヤ。カンヌでも賛否だったポカーンなオチまで、小ネタ&遊び心たっぷりなジャームッシュ組オールスターかくし芸大会は、そのユルさを楽しんだ者勝ちといえる。

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森 直人

“ジャームッシュの『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』”

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

いきなりS・シンプソンのテーマ曲が流れ、カントリーソングの長閑な調べと不穏な予感の表裏一体が作品全体のトーンとなる。まるで、もしジャームッシュがMOOSIC LABに出品したら…(笑)という軽やかさ。全編にロメロへのオマージュが溢れ、旧式の20世紀型ゾンビがトランプ時代の21世紀を襲う。

吸血鬼映画『オンリー・ラヴァーズ~』の兄弟作と言えるが、よりジャンル映画のB級感を踏襲しつつ、「ユルいノリ」も含めてがっちり設計された仕上がり。コーヒー&シガレッツを嗜みながらの観賞が似合う小粋さだが、「まずい結末になる」と早々に予言されるゾンビ禍は、どこか本気で背筋が凍る“悪い冗談のような世界の縮図”だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

J・ジャームッシュ&フレンズによる内輪ジョーク

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

J・ジャームッシュによるゾンビ映画という段階で意表を突いているし、コメディ寄りなのでロメロ風グロテスクとは一線を画している。ジャンルものでも作家性を感じさせるあたりはさすが! 突然のゾンビ・アポカリプスに庶民がどう立ち向かうのか?との大前提はあるものの、面白さを感じさせるのはキャラクター設定。オフビートな警察官コンビに謎めいた葬儀屋やオタク雑貨店主、世捨て人など盛り沢山。しかもゾンビ発生の原因や差別的な男性キャラで社会風刺してはいるが、大半は内輪のジョーク。B・マーレイやA・ドライバー、T・スウィントン、I・ポップといったお友達も勢揃いなので、監督のファンならたまらないはず。

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相馬 学

鬼才が痛烈に謳う「バカは死ななきゃ治らない」

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 B・マーレイとA・ドライバーがジャームッシュ作品でゾンビと戦うのだから、ホラーというよりコメディであるのは必然。他にもT・スウィントンやT・ウェイツ、イギーらが登場し、さながらジャームッシュ・オールスターズ。それだけでファンは必見。

 田舎町で展開する終末騒動はノンキなムードにあふれ、オフビート感たっぷり。ゾンビが生前の趣味やこだわりを持っているという設定も笑いを醸すうえで効いている。

 とはいえ笑ってばかりいられないジャームッシュ作品。スマホやPCに囚われている人間がゾンビのよう思えたと彼は語るが、そんな社会への風刺も抜かりない。愚かな人類はゾンビと同等……と言わんばかりの毒気。強烈!

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

ジャームッシュ版ゾンビ映画は"間合い"が醍醐味

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 この"妙な間合い"が醍醐味。ビル・マーレイの間合いはもちろん絶妙なのだが、アダム・ドライバーも「GIRLS/ガールズ」で証明しているように、こういう間合い芸の達人でもある。この2人なうえに、ゾンビ。ゾンビなんだから動きが敏捷なわけもなく、ここでも間合いがモノを言う。そういえばジョージ・A・ロメロのゾンビ映画もこんなノリ。そんなゆる~いゾンビ映画なので、困惑と紙一重の微妙な笑いがたっぷり味わえる。
 加えてジム・ジャームッシュ映画のパロディ的な味も魅力。監督の「パターソン」に主演したドライバーの役名はピーターソン。監督の過去作の出演者たちが多数カメオ出演していて、それを発見するのも楽しい。

この短評にはネタバレを含んでいます
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