囚われた国家 (2019):映画短評
囚われた国家 (2019)ライター4人の平均評価: 3
侵略型SFパニックの装いをまとったレジスタンス映画
エイリアンに支配された近未来の地球を舞台に、自由と尊厳を取り戻すため反乱を計画するレジスタンスと、エイリアンに協力してそれを阻止しようとする公権力の激しい攻防戦が描かれる。え、それって『V』じゃね?と思った方は勘が鋭い(笑)。そう、基本路線はリメイクもされた名作テレビシリーズ『V』と似ているのだが、よりリアルな「レジスタンス映画」を志向しているのが本作の特徴。低予算ながらも手堅い仕上がりだ。そこには世界中に広がる全体主義社会への警鐘が見え隠れするが、しかし今や新型コロナの蔓延でそれどころの騒ぎではないため、日本公開のタイミングは少々悪かった。
ビジュアルより、浮かび上がる現在との近似がセンセーショナル
センセーショナルな予感が漂うビジュアルと設定だが、その実は、かなりシリアス度が高い仕上がり。基本は、支配する者/される者/反乱する者という構図の格差社会サスペンスという印象。主演がジョン・グッドマンというのも、やや地味。なので、あまり過激な何かを期待すると肩透かしをくらうが、それでも要所に突然、過去のこの種の近未来SFでは観たことのない映像がとび出してくるので侮れない。衝撃アクションの「量」ではなく「質」で心をざわめかせる。
人間は弱い存在で、やがて何か別物に支配される。人間社会への警鐘というこのテーマがうまく描かれたとは言い難いが、こじつけのように現在の世界と結びつけることで戦慄は深まる。
追従か、反逆か? それが問題ってことで。
80年大の人気TVシリーズ『V』を彷彿させる設定と展開で、トランプ大統領下で分断が進み、真実すらフェイク・ニュース化される現代アメリカに警鐘を鳴らすつもりだったはず。とはいえ地球の資源を搾取するエイリアンに追従する富裕層と反逆する庶民の差がさほど明確に描かれておらず、メッセージが伝わりにくい。J・グッドマンはじめとする主要キャスト4名以外の、自由のための戦いに身を投じるキャラクターの扱いが雑なのに驚くが、これが戦闘のリアルということ? 名作『アルジェの戦い』にインスパイアされたと明言しているR・ワイアット監督の、比較を恐れない勇気は立派だが……。
エイリアン支配による異色のデストピア
ストーリーの描き方に特徴あり。10年前からエイリアンによる独裁支配が続くアメリカを舞台にレジスタンスたちのある作戦を描くが、レジスタンス各人の行動を描きつつ、それが何のための行動かが説明されないまま、緊張感とスピードだけが増していき、最後にやっと彼らの目的が分かるという演出なのだ。また、『猿の惑星:創世記』のルパート・ワイアット監督は、メルヴィル監督『影の軍隊』(69)やポンテコルヴォ監督『アルジェの戦い』(66)を意識したとのこと。
抵抗運動を描く物語なのでエイリアンの詳細は描かれないが、宙に浮く奇妙な造形物など、彼らの全く異質の文化が反映された異様な光景の数々のSF的感覚も魅力的。