ピーターラビット2/バーナバスの誘惑 (2021):映画短評
ピーターラビット2/バーナバスの誘惑 (2021)ライター5人の平均評価: 3.8
悪ノリ高じて、『ワイスピ』と化す
初期設定こそ、バッタ君や『ベイブ』のように、都会に出た主人公の大騒動だが、度を超えた嫌がらせバトルが展開した前作に続き、ウィル・グラック監督らが続投。そのため、原作を超越した作り手の悪ノリ感がマシマシ! グリーン・デイの「Boulevard of Broken Dreams」を使った小粋な演出もあれば、ケイパームービーになったかと思えば、中盤から終盤にかけて『ワイルド・スピード』シリーズのパロディをメタ構造でやってのける。終始ボケまくるドーナル・グリーソンに、ガチで意味ねぇ脱線話、さらに砂糖をドラッグに見立てたブラックジョークなど、小ネタも充実で、“大きなお友だち”も十分楽しめる。
湖水地方のウサギVS都会のウサギ
イソップ寓話からヒントを得たような物語で、ピーターの成長と家族愛が描かれる。愛するビーと宿敵トマスの結婚を受け入れたピーターだが、トマスの勘違いで関係がこじれ、ロンドンに生きる野良うさぎの仲間入り!? 相変わらずトラブルメーカーなピーターが巻き起こす騒動はお約束だが、やっぱり笑える。商業主義の弊害や名声が生む弊害、ストリート生活の厳しさといった我々が直面する問題も提起される御伽噺らしからぬ展開だし、後半はハイスト映画の趣きもあり、12歳以下の観客はハラハラドキドキだろう。CGのピーターたちは前作よりもふもふ度UPしているし、シュガーハイになるカトンテールが超絶キュート。
意外なくらい、すんごい面白い
「ピーターラビットのイメージを裏切る暴力性」と、映画評論家・黒田邦雄氏が2018年度の第8位に選出されていた前作。今回はさらに面白さがハネて、内容の半分はギャング映画(笑)。うさぎのピーターが悪党扱いされて家出し、ストリートを独り歩く姿に、グリーン・デイ「ブールヴァード・オブ・ブロークン・ドリームス」が荒れたエモさで流れるシーンなどめっちゃウケる。
そして英国湖水地方のカントリーライフを描出するデザインワークの良さ。伝統的でローカルな味わいと現代的なエンタメ要素の両立がキモだが、「ハリウッド商業主義の作家的搾取」をお話の主題にしている皮肉が洒落てる。「頭がイカれる」ジェリービーンズもヤバい!
大都会に出ても違和感なし。見せ場は最速ギアで圧倒する!
1作目と同様、ピーターたち動物キャラの、いい意味での微妙なリアリティは絶味。すんなり物語にビジュアルが溶け込む違和感のなさは奇跡的だ。物語からすると「地方」出身のピーターたちと「都会」の住民たちとのギャップで楽しませるかと思いきや、そこはわりとあっさり。素直にグロスターを楽しんでいる状況に、こちらも観ていてテンションが上がる。終盤の見せ場は、あまりのテンポの良さとシーンの切り替えで、めくるめく映像体験になるだろう。
「ひつじのショーン」など英国作品から「ホーム・アローン」「ミッション:インポッシブル」のハリウッド娯楽作までオマージュも適材適所。映画製作の裏事情は一見、強引のようでリアルですよ!
ピーターが大都会で大暴れ。楽しいオマケもたっぷり
このシリーズはピーターたちが大暴れしてくれるだけでOK。前回の舞台は田舎だったが、今回は大都会。さらにピーターたちの絵本を描く画家ビアの、ピーターたちへの愛も試される。楽しいオマケも盛り沢山で、新キャラ、バーナバスの声を担当するのは『ウォーキング・デッド』の棒術の達人モーガン役でおなじみのレニー・ジェームズ。彼のシニカルなセリフは少々大人向きかも。また、リスの街頭ミュージシャンがめちゃめちゃ目立つので、声優は誰かと思ったら『ジーザス・クライスト=スーパースター』のユダ役ティム・ミンチン。POPファンには、ヴァンパイア・ウィークエンドやザ・クークス、グリーン・デイ等の曲が流れるのも楽しい。