フリー・ガイ (2020):映画短評
フリー・ガイ (2020)ライター5人の平均評価: 3.4
ラストのロマンスに胸が熱くなる
作り手の並々ならぬ野心が感じられる作品。ゲーム内であることを意識したアクションやセットは凝っていて、お金もたっぷりかかっている。フォックスがディズニーに買収されたことをうまく利用したパロディやカメオもあれば、続編こそ金儲けの方法だなどというハリウッドを皮肉るジョークも。さらに、自分で行動して人生や世の中を変えようというメッセージもあり、そこには強く共感。だが、ぎゅっと詰まっているというより、いろいろありすぎて忙しくなってしまった感じ。それでもラストのロマンスの部分はとてもスイートで純粋に胸が熱くなった。ゲームはバイオレントでなくてもいいのだということに触れるのもいい。
いろいろテンコ盛り!映画館で観たい家族向けエンタメ
規則正しく動くはずのゲーム内のモブキャラが自我に目覚め、すなわちAIに進化する。実際に可能かどうかはわからないが、ファンタジーの着眼点としては面白い。
ゲーム内フォレスト・ガンプのような善人の主人公像は共感度が高いし、それがプログラマーたちの現実世界にも影響をあたえる、世界観の二重構造も独特。パロディは遊び心ににあふれて面白いし、“いい人”的キャラを活かしたR・レイノルズのスター映画としても楽しめる。
どの要素もまんべんなく詰め込んだ結果、パンチラインが曖昧なってしまった感は否めないが、良質のファミリー映画であることは間違いない。ビジュアルも派手なので、スクリーンで見ることをお勧め。
あるあるネタと小ネタの向こうに感動が待っている
オンラインゲームのモブキャラたちにそれぞれ性格があって、プレイヤーには見えないところで普通に生活しているとしたらーーという設定だけでもう楽しい。オンラインゲームあるあるや、20世紀フォックスがディズニーに買収されたのでやりやすくなったのかもしれない小ネタも続々。ライアン・レイノルズとタイカ・ワイティティが期待通りの怪演ぶりなうえに、思った以上にハマり役なのが『ストレンジャー・シングス』のジョン・キーリー。自分の思いを口に出せない内向的ないいヤツの役がよく似合う。モブキャラたちが「与えられた役」を脱ぎ捨てたら、他にやりたいことがあることに気づくというストーリーも奥深く、胸を熱くしてくれる。
モブキャラは「アメリカンヒーロー」になれるのか?
“サングラス=ヒーロー”といった固定観念や暴れまくるタイカ・ワイティティなど、目を引くところもあるが、覚醒するモブキャラという展開から、以前から言われた“アップデートされた『トゥルーマン・ショー』”<<<『シュガー・ラッシュ』×『マトリックス』な感覚。しかも、『エターナル・サンシャイン』感も入ってるなど、とにかく既視感が強い。唐突に流れるヒット曲や、あんなパロディやカメオといった悪ノリ感は、ライアン・レイノルズ繋がりで『デッドプール』を意識しているようだが、どこか振り切ってない。結果、いかにも『ナイト ミュージアム』のショーン・レヴィ監督作らしいファミリー映画として着地。
「トゥルーマン・ショー」+「レディ・プレイヤー1」の新感触
その設定と主演スターの魅力から『トゥルーマン・ショー』が重なる軽快な滑り出し。最初はどんな方向へ進むのか予想もつかない展開に、いい意味で翻弄される快感。
ゲーム内の「モブキャラ=エキストラ的存在」の主人公が自我にめざめるドラマは「みんなそれぞれ個性と人生がある」っていう、まじめなテーマを抱えつつも、映画のノリは、テンポ良すぎ、激しくダイナミックなので、シンプルにエンタメとして楽しめる。その流れで、ピュアすぎる主人公への共感度がぐんぐん上昇していく。
カメオ出演も含め、全編ネタの宝庫。FOXがディズニー傘下になったからこその描写には、素直に爆笑しつつも、業界の現実で不覚にも切なくなったり…。