アダムス・ファミリー (2019):映画短評
アダムス・ファミリー (2019)ライター3人の平均評価: 3.3
多様性と共存のテーマを描いた新生「アダムス・ファミリー」
『アダムス・ファミリー』をCGアニメとして復活させた本作は、さながら「アダムスのお化け一家」のオリジン・ストーリー。偏狭な人間たちから追われ続けたゴメスとモーティシアの夫婦は、人里離れた古い屋敷を安住の地として家庭を築くものの、近隣に出来た“理想の町”の不動産業者が住民を煽って彼らを追い出そうとする。ダークなユーモアとポップな演出のさじ加減がほど良く、多様性の時代に相応しい共存のテーマを子供にも分かりやすく説いたストーリーにも好感が持てる。モーティシアの両親の声をマーティン・ショートとキャサリン・オハラが当てているのは、ティム・バートン監督『フランケンウィニー』へのオマージュだろうか。
あえて今、アニメ化する意義とは?
4作目の製作も決定した『モンスター・ホテル』の影響もあってか、元ネタである「アダムズのお化け一家」もアニメで復活。『フランケンシュタイン』でおなじみの「It's Alive!」ネタも飛び出し、明らかにドナルド・トランプを意識した差別主義者の女性TVレポーターも登場するが、ブラックな笑いも含め、せっかく今アニメ化するなら、もっとブッ飛んだことをやってもいいと思うほど、どこか振り切れてない。つまり、バリー・ソネンフェルド監督の『実写版』を知る者には、これといった新鮮味はないだろう。ただ、ほとんど素で演ってるシャリ姐には爆笑。すでに続編も決定しているようだが、いい意味での変化を求めたい。
社会風刺にうなりつつ、ホラー映画のパロディに爆笑
あのアダムス一家が、現代社会で暮らしていたらどうなるか。やはり周囲の人々の異物を排除しようとする力は強く、それをSNSを使った偽情報でさらに煽ろうとする人物がいるあたりは、まるで現実世界のよう。しかし、それだけに留まらないのが本作の深いところ。世間から"変わってる"という偏見で見られているこの一家が、実は家族同志の間にも"偏見"があったことに気づくのだ。
監督は「ソーセージ・パーティ」のコンビ。その一人は「モンスターVSエイリアン」のコンラッド・ヴァーノンなので、「フランケンシュタイン」はじめ名作ホラー映画のオマージュも続々。多感な思春期の長女ウェンズデーの学校生活も楽しい。