マイ・バッハ 不屈のピアニスト (2017):映画短評
マイ・バッハ 不屈のピアニスト (2017)ライター2人の平均評価: 4
月並みな”偉人伝”の枠に収まらない面白さ
20世紀最高のバッハの演奏者とも呼ばれた、ブラジルの天才ピアニスト、ジョアン・カルロス・マルティンスの伝記映画なのだが、これが月並みな‟偉人伝“の枠になど全く収まらない面白さ。なにしろ、子供の頃から徹底した英才教育を受け、音楽以外の世界を何も知らないで育った主人公が、大人になって初めて単身向かった国外演奏旅行で空港から直行したのが売春宿なのだから(笑)。しかも、3日間とっかえひっかえやりまくったせいで、あやうく大切なリハーサルに遅れそうになる。長いキャリアを通じて数々の苦難を乗り越えたマルティンスだが、そのあまりにも人間臭いバイタリティに見ている方も勇気づけられる。
天才の波乱万丈な反生に圧倒される
天才ピアニスト、ジョアン・カルロス・マルチンスの波乱万丈の半生を描く実話で、驚きの連続。長時間演奏に備えての薬物摂取(ドーピング?)がサラリと描かれるし、アルゼンチン政府の招きなのに売春宿に直行とは異人すぎる!? 才能を認められたのに、負傷で指が動かなくなったり、妻に捨てられたり。カムバック後に美人局被害に遭うに至ってはもう、苦笑するのみ。女好きの前フリもあり、「自業自得」という文字が頭に浮かんだ。次から次に不幸に見舞われつつも、強烈な音楽愛で乗り越えていくジョアンを知った今、コロナに怯えていてはダメねと反省。事実の羅列的な構成で、脚本に面白みが足りないのが残念。最後の本人演奏は素敵です。