ガンズ・アキンボ (2019):映画短評
ガンズ・アキンボ (2019)ライター5人の平均評価: 4
ネットで調子こいてしまった男の地獄巡り
犯罪者の殺し合いをネット中継する闇サイト「スキズム」が社会問題となっている近未来。うだつのあがらない気弱なゲーム・プログラマーが、コメント欄に誹謗中傷を書き込んで日頃のストレスを発散していたところ、IPアドレスで身元と住所がバレてしまい、無理やり「スキズム」に参加させられることとなってしまう。架空の殺人ゲームを通して悪意と暴力が瞬時に拡散するネット社会へ警鐘を鳴らす…というテーマは珍しくないものの、スピーディでクレイジーなノリは悪くないし、仮想空間でしかイキれない負け犬の情けなさ全開なダニエル・ラドクリフも好演。とりあえず、ネットの匿名は匿名じゃないので調子こいちゃいけませんね。
21世紀型アクション、久々の快作!
スリルとユーモアを醸し出すCGゲーム的なアップテンポのビジュアル上の再現。『アドレナリン』『シューテム・アップ』などの00年代の快作に宿っていた、そんなエンタメ精神が甦ったことを、まず喜びたい。
拳銃を打つ以外に両手を使えないばかりか戦わないと殺される……という主人公の苦境を基本設定に、事態は想定外の方向に転がっていく。ヴィランの意外な素顔をはじめ、次々と発覚する事実がキッチリとドラマを織りなす点もイイ。
何よりドラマを背負うのは主人公で、不器用にアタフタしつつ、少しずつ精悍さを身に着ける成長ぶりが、また妙味。ネットオタになりきったラドクリフのアクションの熱演ともども目が離せない。
ハリポタの自虐パロディと楽しんじゃっても、もちろんOK!
ハリポタ卒業後、あえて奇抜な役に多く挑んで10年。そんなラドクリフの「余裕」で心から楽しませてくれる。両手に銃が取り付けられたことで、スマホ操作もトイレも着替えも大苦戦する演技には、肉体で笑わせる経験が生かされ、逃走劇では「見せる」スタントの才能も満開。さえない青年がヒーローとしてめざめていくプロセスに、かつての魔法使い少年の姿も重なって愛おしい。
作品としても、巻き込まれ型ムービーらしいノンストップの勢いが最後まで失速しない。強力ライバルの華麗な動きなど、バトルシーンも映像的に見やすく設計され、アクション映画の基本をクリアしてるので、くだらないギャグやシモネタがスベらない。素直にオススメ!
サマラ・ウィーヴィングの勢いが止まらない!
ジェイソン・レイ・ハウデン監督が注目されたデビュー作『デビルズ・メタル』同様、冴えないオタが事件に巻き込まれる話だが、“いつでも二挺拳銃”に改造され、配信版『バトルランナー』なデスゲームに強制参加させられるスタローン、ヴァン・ダム好きが、ダニエル・ラドクリフという面白さ。『デビルズ・メタル』の主演も同僚役でいい味出すなか、飛ぶ鳥落とす勢いのサマラ・ウィーヴィング演じるサイコパス殺し屋が圧巻! 終盤にかけ、当初のドライヴ感が若干薄まっていくのは惜しまれるが、それでも『アドレナリン』『シューテム・アップ』『ハードコア』など、ど直球なバカアクション好きにはおススメしたい。
バトルは極彩色! 笑いはブラック!
ギャグ感覚がドライでブラック。バトルは極彩色で凶暴度大。VFXマン出身の監督に相応しく、映像が強烈、流れがスピーディ。主人公は趣味がネットでの罵詈雑言というダメっぷり。そのせいで両手にマシンガンを溶接されておマヌケ版シザーハンズに変貌、殺し屋との死闘をネット中継されるハメに。こんなブラック・コメディに主演するダニエル・ラドクリフは『スイス・アーミー・マン』出演歴もあり、この種のテイストが好みに違いなく楽しそうに怪演。加えて必見なのがサマラ・ウィーヴィング。『ザ・ベビーシッター』シリーズ以上にクールで最強なハマリ役で、新作『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』への大抜擢は本作の影響か?