竜とそばかすの姫 (2021):映画短評
竜とそばかすの姫 (2021)ライター3人の平均評価: 4.3
ファンタジックな映像美と高揚感溢れる音楽に酔う
『美女と野獣』(特にディズニー版)のプロットを下敷きにしつつ、これまでの細田守作品のエッセンスを散りばめた集大成的な作品。恐らく監督のやりたいことを片っ端から詰め込んだのだろう。それゆえストーリー的に無理が生じてしまった部分はなきにしもあらずだが、しかしそんな些細な欠点を補って余りあるのがウェブ上の仮想世界「U(ユー)」で展開する壮麗でファンタジックな映像美。これはアニメーションならではの表現力だ。パワフルで高揚感溢れる音楽も素晴らしく、ヒロイン役を兼ねる中村佳穂の繊細で感受性の豊かな歌声にも説得力がある。混沌とした現代社会における若者の不安や葛藤というテーマにも共感できる点は多い。
幾田りらのキャスティングが絶妙!
“すず→Bell→Belle”というヒロインの名の変化が示すように、『美女と野獣』(ジャン・コクトー監督版&ディズニー版)オマージュに始まり、韓国映画的な硬派な社会派ドラマに突入。新海誠監督作に喧嘩を売ってるようにも見える、音楽映画としてのクオリティの高さに圧倒。さらに、中村佳穂演じる歌うまコミュ障高校生も悪くないが、自身と異なりプロデュースする側に回る、捻りの効いたメガネっ子を演じる幾田りらのキャスティングが絶妙。『デジモン ぼくらのウォーゲーム!』『サマーウォーズ』と、約10年ごとにヴァーチャル世界を描いてきた細田守監督だが、今後も時代や世相に合わせて、製作してもらいたいと思わせる一本。
終わらない歌を歌おう
細田監督がインターネットの世界に三度、還ってきました。
『サマーウォーズ』の世界を堪能できた方にはたまらない世界観です。
仮想空間における歌姫が登場すると言うこと、ある程度、、想像がつきましたが、見事なまでの音楽劇になっていました。そう言う意味でもキャスティングには納得です。
現実の出来事のリンクさせる物語は架空の世界のものであると同時に非常に身近なテーマものになっています。
ネット世界の自由自在で拡がりを見せる描写は細田守世界の真骨頂と言えるでしょう。
夏邦画の大本命であることは変わりなく、期待値を目一杯上げて映画館に向かいましょう。