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恋する遊園地 (2019):映画短評

恋する遊園地 (2019)

2021年1月15日公開 94分

恋する遊園地
(C) 2019 Insolence Productions - Les Films Fauves - Kwassa Films

ライター5人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.2

なかざわひでゆき

普通の女の子になれないヒロインが愛したのはマシンだった

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 遊園地だけが心の拠り所の内向的で繊細な若い女性が、新しい巨大アトラクション「ジャンボ」に本気で恋してしまう。いわゆる“対物性愛”を題材にした作品。まるで『トランスフォーマー』のオーボットとのロマンスのごとき妄想シーンのファンタジックなときめきとは裏腹に、周囲から「頭がおかしい」「ふざけているのか」などと非難されながらも、ジャンボへの狂おしい愛と性の衝動に突き動かされていくヒロインの恋路は極めてシリアスだ。浮かび上がるのは、社会に押し付けられる「普通の女の子」になりたくてもなれない女性の孤独。その隙間を埋めてくれる存在がジャンボなのだ。「燃ゆる女の肖像」に続くノエミ・メルランの熱演も光る。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

多様性のストライクゾーンぎりぎりを突く現代の寓話

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 遊園地のアトラクションに恋心を抱く、鉄や機械油に性的なものを感じる……という設定はJ.G.バラードの『クラッシュ』を連想させるが、こちらは変態チックではなくメルヘンに近い。

 闇夜を照らす遊具のカラフルなライトは美しく幻想的。最初は地味に見えたヒロインのファッションの変化も効果的。『燃ゆる女の肖像』も記憶に新しいN・メルランの官能的な熱演が映える。

 多様性の受容というテーマを含んでいる点では、おとぎ話というよりはむしろ寓話。多様性の際どい部分を狙っているので物語の好き・嫌いが分かれるだろうが、テーマにはブレがない。そういう意味で一見の価値がある。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

ベルギー映画らしい、だいぶ不思議な恋物語

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

まるで、どこかのテーマパークのコピーのようなタイトルだが、独特な映像美や極力抑えたセリフなどから、同じベルギー映画『小便小僧の恋物語』を思い出すSFファンタジー要素満載のラブストーリー。なんせ、『燃ゆる女の肖像』の画家よりも少女性が強調されたノエミ・メルラン演じるヒロインの相手は、オクトパスやトロイカ系といえるアトラクション。ガチな対物性愛者ではあるが、まるで巨大ロボットの掌に包まれているかのようで、オイルまみれになる性愛シーンも、どこかスタイリッシュ。他人から理解されない行為による自我の解放は、同時期公開の『Swallow/スワロウ』にも通じるテーマだけに、観比べるのも一興。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

性的嗜好は人それぞれ。他人のセックスを笑うな!

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

人間ではない物に性愛感情を抱く「対物性愛」をロマンティックなラブストーリーに仕上げている。この性的嗜好は一方通行なはずだが、内気なジョアンが恋したアトラクション「ジャンボ」が彼女の気持ちに応える点がファンタジックだ。二人(?)が恋に落ちる場面や愛を交換する場面がSF映画っぽいせいか、お掃除ロボットの恋と冒険を描いたアニメ『ウォーリー』を思い出した。ただし風変わりな恋愛をする娘を心配する母親との関係がこじれるあたりから、多様化する社会で他者をあるがまま受け入れることの重要性という大きなテーマが見えてくる。『燃ゆる女の肖像』の熱演が記憶に新しいノエミ・メルランがヒロインを好演。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

女の子と巨大機械が互いに恋に落ちる

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 女の子と機械の恋物語だが、これはちょっと異色作。片思いではなく相思相愛、しかもプラトニックではない。主人公は、人間よりも機械が好きで自分の部屋で機械を組み立てている女の子。そんな彼女と、遊園地の巨大絶叫系アトラクションマシンが、恋に落ちる。夜の遊園地は、日常とは違う不思議な光に満ち、その柔らかな光が放つ色彩は恋するときの夢を見ているような心持ちと同じ甘さ。そして彼女とマシンは有機物と無機物の差異、個体サイズの違いを超えて、一緒に快感を共有する。その体験がどう映像化されるのかも見どころ。ヒロイン役は「燃ゆる女の肖像」で画家役で注目のノエミ・メルラン。今回も自分の意志を貫く女性を演じている。

この短評にはネタバレを含んでいます
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