アーヤと魔女 (2020):映画短評
アーヤと魔女 (2020)ライター2人の平均評価: 4
逆境をはねのける強気でしたたかな少女アーヤが痛快
孤児院で育った少女アーヤが意地悪な魔女ベラ・ヤーガに引き取られ、家の中に閉じ込められて奴隷のようにこき使われる…という、少女残酷物語みたいな設定なのだが、しかしこのヒロインのアーヤがどこまでも強気でしたたかで負けず嫌いなのが実に頼もしく、持ち前のポジティブさや狡賢さを存分に発揮し、次々と逆境をはねのけていく姿がとても痛快だ。これぞまさしく世渡りに必要なサバイバル能力。むしろ、周囲を思いのままにしていくアーヤこそが、ベラより一枚も二枚も上手な魔女である。辛辣なブラック・ユーモアを盛り込んだ軽妙な語り口も面白いし、ジブリ映画では初となる3Dアニメの完成度も高い。
ジブリ「らしくなさ」が、むしろ新鮮で愛すべき作品に
スタジオジブリ長編で初めてのフル3DCGということで、過去の作品とは明らかに違う質感も、キャラクターデザインや表情の作り方などにジブリの伝統が息づいており、意外にすんなり受け止められる。猫の毛の濡れた質感など細部からも3Dのメリットが伝わり、見せ場となるバンドのライヴに3D効果は最大限に発揮される。基本的に原作に忠実なストーリーだが、そのバンドまわりは監督のアイデア。ロック少年のピュアな衝動が、魔法使いのファンタジーを現実と地続きにさせた。
人生の深いテーマが隠れていそうで、そこが突出することはない。いい意味で「軽い」ので、物足りなさを感じる人もいるかもしれないが、個人的には清々しい後味に。