パンケーキを毒見する (2021):映画短評
パンケーキを毒見する (2021)ライター4人の平均評価: 4.3
その国の政治は国民の写し鏡に過ぎない
もはや悪い冗談としか思えないほどの機能不全に陥った日本の政治。まさにその象徴とも呼ぶべき現政権のトップを切り口にしつつ、隅々にまで無気力と無責任と無関心が蔓延した現代日本の堕落した実像を浮き彫りにしていく秀逸なドキュメンタリー。単なる政権批判に終わらないところがミソだろう。常日頃から政治に関心を持ち、国内外の報道に触れていれば、特に目新しい情報はないものの、しかしこうやって分かりやすく簡潔にまとめられると改めて暗澹たる気持ちにもなるはず。なぜこうなってしまったのか。見終えた後に強く感じるのは、国民自身が変わらねばならないということ。なぜなら、その国の政治は国民の写し鏡に過ぎないからだ。
五輪と総選挙の狭間に投下された爆弾……となるか!?
国会中継を見ていると質疑がまったく噛み合ってないなあ……と思うことが頻繁にあるが、その背景を含めて興味深い一編。政治ドキュメントだが、とにかくわかりやすい。
現政権ののらりくらりとした戦術、それに忖度するメディア、一方では選挙への無関心。アニメを駆使した映像はユーモラスで、その瞬間こそ笑えるが、見終わってみると、笑えない現実があることに、血の気が引く思いがしてくる。
五輪開催については軽く触れる程度だが、それでも権力のグタグダぶりは伝わってくる。インタビューに応じた人々の発言は真を突いており、とりわけ政権与党に籍を置く人々の内閣への苦言は重い。選挙前に見ておきたい力作。
どんな人が国のリーダーでも何とかなる…は、そろそろ限界?
現在の首相のドキュメンタリーを製作して公開する。それだけでも日本では異例だし、2021年6月くらいの状況まで収められているので、早めに観ておくべき作品かと。
全体の作りは「楽しませること」が優先され、リラックスして観られるし、とはいえマイケル・ムーア作品のように、やり過ぎ感や挑発はなく、あくまで事実を冷静にたどるアプローチが潔い。でもその事実、たとえば国会での質疑応答のグダグダなんてコメディとしか思えなくて、「この国、大丈夫?」と笑って済ませられなくなる感覚だ。
要所のアニメの配置など全体のバランスにも苦心がみられ、タイトルどおり甘味と毒の相互作用の末に、最後は強烈なメッセージも突きつける。
怒れる羊になりましょう!
パンデミックで馬脚を表した菅義偉の本質と彼を支える政治資金&人脈を追い、日本の政治に迫る、面白くてためになるドキュメンタリーだ。既得権にしがみつき、敵とみなした人間を追い落とす政治力はある菅は果たして、国のトップに相応しいのか? 答えは明らかだが、見識豊かなジャーナリストや学者、「NO」を突き付けた元官僚らが理路整然と菅義偉や自民党政権を分析してくれる。また政界だけでなく大手新聞社の日和見姿勢や「政治なんてわからない」と右に倣えを決め込む庶民にも反省を促す監督の姿勢が素晴らしい。国政を注視し、間違っていると思うことに異を唱えることは国民の務め。怒れる羊にならなくてはと肝に銘じた。