ジュラシック・ワールド/新たなる支配者 (2022):映画短評
ジュラシック・ワールド/新たなる支配者 (2022)ライター7人の平均評価: 3.7
シリーズ完結に相応しい同窓会展開
随所に仕掛けられたオマージュ演出に、前シリーズの科学者トリオ参戦からの共闘など、同窓会展開ともいえる製作者のサービス精神は、とにかく嬉しい。それも含め、シリーズ最長の上映時間になっているのだが、今回掲げている「共存」というテーマに関しては、大風呂敷を広げすぎた印象が強く、とにかく消化不良。恐竜相手に“アクション映画あるある”が展開され、ディチェン・ラックマンの悪女っぽりも見どころの中盤のマルタ島シーンを始め、あくまでもアトラクション・ムービーとして振り切った感は悪くはないのだが、恐竜をじっくり見せてくれるシーンも少なく、聴きたいテーマ曲もフルで聴けないのはちょっと問題だ。
祝祭のハイブリッド進化形ノンストップアクション!
『フランケンシュタインの怪物』に接近した『炎の王国』(監督:J・A・バヨナ)という漆黒の前作からバトンを受け継ぎ、いきなりパーティー沸騰状態。全てを強引に回収し、大らかな肯定性を謳うパワフルな快作だ。もはや何の映画!?との気もするが(笑)、トレヴォロウ監督の陽気な資質のテンションを支持したい。
新旧の愛しき面々が皆揃っている。お話は旧約聖書の出エジプト記を彷彿させる不穏さも漂わせつつ、「恐竜」を加えた西部劇や、地中海に浮かぶマルタ島での『007』系チェイス。サム・ニールはまるでインディ・ジョーンズ。93年の第1作から約30年。VFX配合もちょうど良く、アトラクティヴな映画の愉楽に満ちている。
シリーズの最後を飾るお祭り騒ぎ的な快作
世界中に解き放たれた恐竜たちとの共存を人類が模索する中、遺伝子操作された巨大なイナゴによる農作物被害が相次ぎ、やがて恐竜の安全な研究を表看板にした巨大バイオテクノロジー企業の恐ろしい陰謀が浮かび上がる。ストーリーそのものは予定調和で凡庸と言わざるを得ないものの、しかし日常風景に恐竜が存在するという世界観はこれまでになく新鮮。中でも、マルタ島の市街地で繰り広げられる恐竜チェイス・シーンは迫力満点でワクワクさせられる。新旧「ジュラシック」シリーズの主要キャスト集結も嬉しいし、フルアニマトロニクスを含む恐竜たちの描写も相変わらずクール。シリーズの最後を飾るお祭り騒ぎとして楽しむべし。
“パーク”を含めた、サーガの(一応の)完結編
『ジュラシック・ワールド』に始まった新シリーズはシンプルに楽しめる“パーク”と比べると、テクノロジーの進化による人間の驕りに向けたテーマが宿っていた。そういう意味では“パーク”に戻った感がある本作。
基本的には“ワールド”の主人公カップルが街で、大自然で、恐竜からサバイバルする話。大企業の陰謀を暴く大筋はあるものの、そこに重さはなく、“パーク”1作目の科学者トリオの再結集や、同作の恐竜の再登場を含めて、お祭り的に楽しめる。
“ワールド”前2作のドラマ性を気に入っていたファンには不満が残るかもしれない。しかし“パーク”を含めた壮大なサーガの締めとして、これはこれでアリだ。
過去5作とはまた違う恐竜の味わい、怖さ、愛おしさ
世界中へ恐竜が放たれた設定で、いきなりその状況が陸・海・空で描かれ、度肝抜く映像から、ユーモア感じさせる遭遇まで、多方面から一気にテンション上げる“つかみ”が最高。中でもマルタ島のシークエンスは、凶暴な生き物としての恐竜の動き、スピードに悶絶。
終盤の攻防は、位置関係のわかりにくさ、重要キャラと組織、その周辺のユルさなどツッコミどころ多いも、大らかな心で許容すれば、アニマトロニクスの巨大頭が迫るおなじみのシーンに、シリーズ長年見守ってきた人なら無防備で熱くなる。
ある恐竜のドラマは、いくらでもベタな感動で盛り上げられるところを、ドライに冷静に演出したのも好感。人間キャラにもさりげない多様性が。
見たいものが見られる
約30年に渡って続く恐竜映画の大ヒットシリーズ第6弾。本作をもってシリーズに一つの大きなピリオドを打つということもあって、キャスト面でも盛り沢山。”ワールド”の続投組も良いですが、”パーク”のオリジナルキャストが揃ったのは感慨深いものがありますね。
恐竜映画の新たなスタンダードとなったシリーズだけに、見たいものがちゃんと見られる大作になっています。メインキャストが増えた分、人間ドラマパートが多くなっていることに関しては、もっと恐竜を!!という意見もあるかもしれませんが、個人的にはこのくらいのサービスがあっても良かったのではと思いました。
街で、森で、大空で、恐竜たちの情景が楽しい
とにかく恐竜の種類が多く、サイズも小型から超大型まで多彩、みな動作は素早く、動きにも個性がある。さらに恐竜たちが出現する環境もヴァリエーション豊かで、雪の大平原、森の中、凍った湖の上、大空などなど。人通りの多い街の中でのラプターたちとオートバイの複雑なチェイスシーンも迫力もの。そんな恐竜のいるさまざまな光景をたっぷり見せてもらえるだけで楽しい。そこでさらに欲張りになってしまって、恐竜が出現するといつもバトルになるのが逆に物足りないような。ちょっとだけ描かれる、恐竜たちが大自然の中でゆったりと暮らす光景をもっと見せてもらいたかった気もしてくる。シリーズに続きがあるなら、そんな情景もぜひ。