シャドウ・イン・クラウド (2021):映画短評
シャドウ・イン・クラウド (2021)ライター5人の平均評価: 3.2
戦争アクションか、今撮るべき映画か!?
もっとも論議を呼ぶのは、“この映画にグレムリンというバケモノが必要だったのか?”ということだろう。
ドックファイトはスリリングだし、銃座に閉じ込められているヒロインのひとりぼっちの奮闘に、ただただ目を見張る。が、戦争ドラマの渦中にバケモノが出てくると、途端にリアルな緊張感が減退する。
視点を変え、グレムリンが何かのメタファーであるとしたら? 通信機越しにセクハラ的な嫌がらせを受けるヒロインの姿を見れば、そこに注目したくなるはず。いずれにしても、ほとんど独り芝居で前半を引っ張り、後半ではヒットガールと化す、クロエの熱演は必見。
80年代テイストが妙にジワる
狭い銃座に閉じ込められる密室劇から荒唐無稽な銃撃戦へ。『クロニクル』以降、パッとしないマックス・ランディスらしい“クロエVSグレムリン”な一発ネタすぎる脚本であることには間違いない。特にカバンの中身ネタは引っ張りすぎにも感じるが、ジョン・カーペンター監督作ばりに胸躍るシンセサウンドに、セクハラ&パワハラ当たり前な筋肉バカな乗組員、まさかの肉弾戦へと至るトンデモ展開など、随所に詰め込まれた80年代テイストが妙にジワってくる。2作目以降の『スカイライン』好きならマストでおススメなうえ、ハリウッド進出し、こんな変な映画を撮ったロザンヌ・リャン監督の今後から目が離せない!
グレムリンを素手でボコるクロエ・グレース・モレッツが最高!
太平洋戦争時のニュージーランド。とある「ミッション」のため戦闘機へ乗り込んだ米空軍の女性大尉が、ミソジニー丸出しの男性兵士たちによる嫌がらせに悪戦苦闘しつつ、魔獣グレムリンと日本軍の零戦を相手に決死のバトルを繰り広げる。モンスター・ホラー×戦闘機アクション×フェミニズムという異色の三位一体。ジョン・ランディスの息子マックスが手掛けた脚本は、グレムリンを「有害な男性性」のメタファーとしつつ、『エイリアン2』のリプリーばりにタフで屈強な女戦士の活躍を描いて痛快だ。いざとなったらビビりまくる男たちを尻目に、モンスターを素手でボコボコにするクロエ・グレース・モレッツが最高!
理屈を忘れて楽しむべきポップコーン映画
次から次へと何かが起こり、息をつく暇がない。スリルもエネルギーも満点。所々に現実離れした部分があったりするし、ハリウッド超大作を見慣れた目には低予算のCGが安っぽく見えるが、そういうことも迫力で押し切ってしまう感じだ。そんな今作を引っ張るのは、ニュージーランド訛りをマスターして挑む主演のクロエ・グレース・モレッツ。B級っぽい今作にも彼女は200%を注ぎ込み、ひとり芝居状態のシーンでも目を離せない演技を見せる。理屈を忘れて楽しむべきポップコーン映画だが、男社会に生きる女性のリアルというちょっとしたメッセージが入っているのも良い。
上空密室ドラマ急暴走の快感! クロエがジェンダー問題にも喝!
クロエ・グレース・モレッツが第二次大戦中の爆撃機の乗員役。その設定だけで何やら大胆な仕掛けがありそうな予感だが、予想を軽々と超える突拍子のなさに、むしろ感激。上空密室での生死をかけた戦いは“ありえない”度がぐんぐん上昇して快感だ。
グロさ、痛さも躊躇なく、いい意味で悪趣味的に描かれ、作品の方向性はブレない。ゆえに暴走気味なクライマックスも笑って許せてしまう。
クロエの役は一人だけ戦闘機下部の球型銃座に追いやられ、上部の男たちの女性差別的な発言を聞かされ、意外にもジェンダー問題がせり出してくる。さらに思わぬシーンで母性愛が使われたりと、女性監督らしさが通底。
予備知識ゼロで観たので高得点に。