Blue Island 憂鬱之島 (2022):映画短評
Blue Island 憂鬱之島 (2022)ライター2人の平均評価: 3.5
香港で上映できない香港(にまつわる)映画
ドキュメンタリー『乱世備忘 僕らの雨傘運動』を撮ったチャン・ジーウン監督の新作は、2014年の雨傘運動だけでなく、1967年の六七暴動、1973年の文化大革命、1989年の天安門事件といった過去のトピックを通じ、“愛すべき香港”を見つめ直すという壮大なテーマを扱う。ドキュメンタリーパートに、前出のトピックに関わった当事者を近年の抗議デモに参加した若者が演じるドラマパートが挿入。多少の予備知識は必要だが、時代や世代を超え、自由を求めた両者の静かな交流は激しく胸を震わせる。かなりの異色作ではあるが、「国安法」による厳しい検閲によって、香港で上映できない香港映画という意味でも一見の価値アリだ。
香港がなぜこうなったか、香港人の思いと現在までよくわかる
ニュースから伝わる香港の現在に、かつてを知る人は暗澹たる気分になるが、本作は過去の重要な歴史と絡め「今」を映し出すスタイル。とは言っても、教科書のようなドキュメンタリーではなく、現在の俳優が過去を演じるドラマパートがあったりと、演出のこだわりが随所に。デモに参加し“香港人”のプライドを持つ人に、あえて“中国人”を演じさせ、内面の忸怩たる思いを炙(あぶ)り出したり、モデルとなった当人と、その若き日を演じた人を同じシーンで対話させたり、観ているこちらの心を異様にざわめかせる瞬間がある。
デモのシーンも静けさが強調されるなど、全体に冷静な視点。強烈なパンチを食らうというより“じわじわ来る”系の作品。