ウェイ・ダウン (2021):映画短評
ウェイ・ダウン (2021)ライター5人の平均評価: 3
定番メニューにひと味加えた美味しい一品
定番メニューにややアレンジを加え、実にうまく料理をしたというべきか。結果的に美味しいものになって、文句なし。緊張感あるシーンがたっぷりで、テンポも良く、楽しませてくれる。天才的大学生の主人公トムに、オタクっぽくもなく、特別カリスマがあるわけでもないフレディ・ハイモアを選んだのも正解。良い人オーラがあり、好感度が高い彼に観客は思い入れをするし、彼がリーアム・カニンガムとの間に築いていく関係にも信憑性がある。トムが次々に「さすが」とうならせる解決策を思いついてくれるところもおもしろい。エスケープ映画としては十分合格点。
サッカーW杯の興奮と強盗計画のスリルがシンクロする!
スパニッシュ・ホラーの巨匠ジャウマ・バラゲロの最新作は、これぞまさしく王道中の王道と呼ぶべき強盗アクション。17世紀の沈没船から回収した秘宝をスペイン政府に横取りされたイギリスの探索チームが、天才的な頭脳を持つケンブリッジの大学生をリクルートし、世界で最も「安全」とされるスペイン中央銀行の金庫から秘宝を盗み出そうとする。そんな本作のユニークな点は、’10年にマドリードで開催されたサッカーW杯の喧騒に紛れて強盗計画を実行すること。盛り上がるサッカーの興奮と秘宝強奪のスリルが絶妙にシンクロしていくのだ。人気ドラマ『グッド・ドクター 名医の条件』で忙しいフレディ・ハイモア久々の映画主演作でもある。
ワールドカップ決勝戦の興奮と犯罪劇のスリルが一体化!
セリフで引き合いに出される『オーシャンズ11』のごとく、難攻不落の大金庫を狙ったチームの奔走劇が展開。そこにF・ハイモア演じる天才工科大生が混じるという寸法。
スペイン中が熱狂した2010年FIFAワールドカップ決勝戦のさなかの決行というアイデアは買い。試合の経過を気にする部下を叱りつけながら、警備に全精力を傾ける警備主任の手ごわいヴィランぶりも光り、激しい攻防から目が離せない。
オチに詰めの甘さはあるものの、『オーシャンズ11』のような痛快さは捨て難く、続編の可能性を匂わせる結末に期待してしまう。バラゲロ監督の『REC』に続くシリーズ化、なるか!?
ホラー職人が手掛けるケイパームービー
『REC レック』のホラー職人ジャウマ・バラゲロ監督と、気づけば三十路のフレディ・ハイモアという異色タッグ。序盤こそ“ハイモア版『アンチャーテッド』”なアドベンチャーを期待させるが、全米公開時のタイトル「The Vault=金庫室」が示すように、『オーシャンズ』フォロワーなケイパームービー(オマージュもあり!)。ハイモアの「グッド・ドクター」の天才キャラありきのアイドル映画にしては硬派な作りで、2010年サッカーW杯に沸くマドリードでの犯行という設定も興味深いが、いかんせんチームのメンツ&キャラの弱さとキレの悪さが目立つ。エンディングに流れる「ゴッド・セイブ・ザ・クイーン」も虚しく聞こえる。
リーアム・カニンガムは現代劇でもやっぱりシブい
ワールドカップの決勝戦に沸く人々が溢れるマドリッドで、スペイン銀行の"世界一安全な金庫"の中の海賊ドレークの財宝を狙って各種のプロが集結、という集団強盗ドラマだが、キャラ設定とキャスティングがオイシイ。フレディ・ハイモアが『グッド・ドクター 名医の条件』で彼が演じるサヴァン症候群の天才外科医にちょっと似ている工学の天才の大学生役。『ゲーム・オブ・スローンズ』の元密輸業者の"玉ねぎの騎士"ダヴォス役が渋かったリーアム・カニンガムが、財宝探しが趣味の億万長者役。彼の手足となって働く相棒役は『マレフィセント』では魔女の使い魔のカラスになってたサム・ライリー。世代の違う英国男優たちの共演が楽しい。