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エゴイスト (2023):映画短評

エゴイスト (2023)

2023年2月10日公開 120分

エゴイスト
(C) 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.7

森 直人

まっすぐな「人間主義」の勝利

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

純粋に「役者を観る歓び」がある。鈴木亮平の強度、宮沢氷魚の澄明さ。剛柔のコンビネーションが抜群で、母親役の阿川佐和子も素晴らしい。『きのう何食べた?』の西島秀俊&内野聖陽が脱力日常系だとしたら、こちらはもっと熱っぽい。だが基本的には適度に抑制が効いた慎ましいタッチで、鈴木がちあきなおみの「夜へ急ぐ人」を熱唱する外連味にも嫌味がない。

松永大司監督作では筆者にとって『ピュ~ぴる』以来の感銘。シンプルに「人間を撮る(寄り添う)」ことが主軸で余計なものがない。繊細にして線が太い。ラブストーリーとして上質なうえ、家族の在り方の再定義や新しい共助の可能性も示唆してくれる。スタッフワークも充実!

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

キャリア最高の芝居を魅せる鈴木亮平

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

前半こそ、典型的な“ボーイ・ミーツ・ボーイ”展開だが、仲間たちと『Wの悲劇』について語らい、高まるあまり、ちあきなおみの「夜へ急ぐ人」を独り熱唱するような、主人公・浩輔のリアルな日常がいいアクセントに。この時点で、キャリア最高の芝居を魅せる鈴木亮平だが、まさかの展開からの後半パートでさらにスゴいことに。対する宮沢氷魚は仔犬のように純粋かつ儚げな表情を浮かべ、その絶妙な距離感を『さがす』の撮影マン、池田直矢が捉えていく。確かに性描写は激しいが、普遍的な人間ドラマであり、直球なタイトルとともに、父役の柄本明が放つセリフ「出会っちゃったからしょうがない」が後を引く。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

1年を代表する…どころか向こう10年でも誇れる名演の鈴木亮平

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

最高の相手と出会い、愛を育もうとする彼ら。愛の先に何が待つのか、ひとつの運命を提示しながら、幸福と傷み、覚悟、思いやりなどあらゆる感覚が押し寄せ、激しく胸を締め付けるドラマが送り届けられる。
鋭利な響きのタイトル。誰のどんなエゴか。そこにも愛の本質が見える。

冒頭から幸せな描写にもどこか不安な空気が静かに漂うのは、演出の意図なのか。
主演2人のケミストリーも異常レベル。鈴木亮平は文字どおり一挙一動を計算しつつ、そこに感情を鮮やか、かつ繊細に乗せきる演技のひとつの理想郷を示した。阿川佐和子もノーメイクで誠実。
ゲイを主人公にした日本映画で、間違いなく語り継がれるであろう凄まじい後味の傑作。

この短評にはネタバレを含んでいます
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