All the Streets Are Silent:ニューヨーク(1987-1997)ヒップホップとスケートボードの融合 (2021):映画短評
All the Streets Are Silent:ニューヨーク(1987-1997)ヒップホップとスケートボードの融合 (2021)ライター3人の平均評価: 3.3
スケボー文化の黄金時代を振り返るドキュメンタリー
‘80年代末~’90年代にかけて、ヒップホップのメジャー化と共に興隆したNYのスケボー文化を、当事者たちの証言と貴重な記録映像を交えて振り返るドキュメンタリー。映画『KIDS/キッズ』に出演して有名になった若者たちの素顔、Zoo YorkやSupremeといったスケボーブランドの創設秘話などが紐解かれ、今ではビジネスや役者などで成功した元スケボーキッズたちの姿に時の流れを感じる。ジェイZやパブリック・エナミーなどのレアな映像も満載だし、無名時代のヴィン・ディーゼルやベン・スティラーがスケボーキッズ御用達のクラブの用心棒だったというエピソードなども興味深い。X世代のサブカル・ファンは必見だ。
映画『KIDS/キッズ』のもう一つの側面が見えてくる
ラリー・クラーク監督、ハーモニー・コリン脚本の1995年の映画『KIDS /キッズ』の時代をストリート・カルチャーの視点から描くドキュメンタリーであり、シーンのその後を描く続編として見ることも出来る。
1990年代ニューヨークのストリートで、ヒップホップ文化とスケートボード文化が出会い、クラブやスケートボードショップ、大学のラジオ局で何が起きていたのか。当時の映像と並行して映し出される、今は有名人となった『KIDS/キッズ』のロザリオ・ドーソン、当時クラブDJをしていたモービーらミュージシャンたちが語る当時の思い出もリアル。何かが生まれていくときの湧き上がるエネルギーと熱気が伝わってくる。
NYストリートからのムーヴメントが「うねり」のように伝わる
そびえ立つワールドトレードセンターを背景に、ダウンタウンを滑るボーダーたち。西海岸とは違って、車や歩行者とも接触する危うさにハラハラしつつ、スケボーがヒップホップと融合し、ファッションブランドや映画へと発展するNYカルチャー、その一端の流れが、本作を観ると肌に染みわたるように実感できる。
クラブ・マーズを立ち上げた日本人ユウキ・ワタナベ、ストリートカルチャーとともに育った俳優ロザリオ・ドーソンらの証言が、9.11テロ前のNYカルチャー、その自由なムーヴメントをエモーショナルに伝え、やがてストリートの文化が商売になり、本質が失われる現実に、観終わってみれば一縷の哀しみに包まれるのであった。