Never Goin' Back/ネバー・ゴーイン・バック (2018):映画短評
Never Goin' Back/ネバー・ゴーイン・バック (2018)ライター5人の平均評価: 3
下品だけど憎めない貧困女子たちの青春おバカムービー
アメリカ南部テキサスの田舎を舞台に、うだつのあがらない日々を送るウェイトレスの貧困女子コンビが、こんな生活もう嫌だ!どこか遠くへ行きたい!そうだ、思い切ってビーチリゾートで非日常を楽しもう!と思い立ったところ、次々と予想外のトラブルに見舞われていく。高校中退でまともな学歴も職歴もなし。周囲を見渡しても、ヤクの密売に手を出そうとして反対に金を巻き上げられた無職の兄貴とその仲間たちなどポンコツだらけ。そんな情ないホワイトトラッシュ・ギャルズが、頭悪いなりに奮起してダメな自分たちを変えようとする。女性の貧困を題材にしたところが珍しいおバカ青春ムービー。下品だけど微笑ましくて憎めない。
どん詰まりの日々に、彼女たちは戻らない……のか!?
『SPUN/スパン』を彷彿させる麻薬と金欠のはきだめにハイティーン女子ふたりを置き、タメダメな日常を描く。
見ていて歯がゆくなるほど誘惑に弱いヒロインたちが憎めないのは、自由気ままなバイタリティゆえか。監督の実体験に基づいていることもあり、下ネタのギャグも妙に現実にフィットして、ユルい世界観の中で不思議な魅力を放つ。
“決して戻らない”というタイトルも味があり、なかなか意味深。タイトルどおり、彼女たちははきだめを後にするのかもしれないし、相変わらずそこに居続けるのかもしれない。そんなことを考えさせ、余韻を残すのが妙味。
下ネタ多め、おバカキャラ大行進なガーリームービー
女優の監督作という意味では“ビッチな『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』”であり、A24作品という意味では“マイルドな『Zola ゾラ』”なことを、2作に先駆けやっていた2018年作品。どちらにしろ、下ネタ多めの無敵すぎるガーリームービーだが、貧困問題を扱いながら、おバカキャラ大行進ゆえにまったく辛気臭くなく、軽い伏線回収もアリ。とにかく、ディカプリオの元カノでおなじみカミラ・モローネと『ティーン・ビーチ』シリーズのマイア・ミッチェルのやりきってる感がやけに心地良い。マイケル・ボルトンの「ウィズアウト・ユー」など楽曲の使い方も笑いを誘うが、オチに関しては賛否分かれるかも。
女子コンビのタフなバイタリティが気持ちいい
いろいろあっても絶対にヘコまない、10代女子2人のタフなバイタリティが気持ちいい。本作同様、女子同士の恋愛とは無関係な友情を描く『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』は優等生女子高生コンビだが、本作のコンビは学校も勉強も不得手、実家を出てバイトで自活しつつ共同生活中。治安の悪い地域で暮らし、彼女たち自身も危ないことをしているが、そこはテキサスの夏、世界はどこまでも明るい。しかもテキサス生まれの本作の監督、オーガスティン・フリッゼルのほぼ自伝的作品とのこと。下ネタや違法ネタが続々出てきて、こちらが無意識のうちに抱いてしまっている"女子はこうあるべき"という偏見に気づかせてくれる。
シモネタも自虐も超積極的! 夫とはまったく違う妻の作風に驚き
監督自身の10代を基にした青春ガールズムービーで、おしゃれ&ポップなイメージも想像してた自分が恥ずかしくなるほど豪快な仕上がり。ファレリー兄弟やジャド・アパトーを彷彿…というより、それらを超えるレベルの過激な笑いの描写を盛り込みつつ、2人の女子の絆を熱く、切なく、時に冷めた目で語りつくした印象。わざとベタベタな選曲にするなど確信犯的演出も楽しめる。
出てくる若者たちのダメさ加減が悪循環していく展開はある程度、予想どおりなのだが、主演2人の振り切った熱演を観ていて飽きることがない。
監督は『グリーン・ナイト』などを撮ったD・ロウリーの妻。本作の次の一本が端正なラブストーリー。未知数の才能かも。