キラーカブトガニ (2021):映画短評
キラーカブトガニ (2021)ライター4人の平均評価: 3.3
ジャンル系パロディとして優秀なC級モンスター・パニック
海岸沿いの平和な田舎町に兇暴化した人喰いカブトガニ軍団が襲いかかる!という「ジョーズ」のパクリのさらにまたパクりみたいなお話なのだが、途中からカブトガニがヒューマノイド化して「エイリアン」に!最後は巨大モンスター化して「ゴジラ」に!しかも天才ギーク少年が開発した手作り巨大ロボットと激突!という一粒で何度も美味しいC級モンスター・パニック映画。なるほど確かに安っぽいことこの上ないのだが、脚本は良く出来ているし役者の芝居もしっかりしている。ギャグの冴えも抜群。ジャンル系パロディとして実に優秀だ。スペシャル・サンクスにロイド・カウフマンの名前を発見して、ある種の答え合わせになりました(笑)。
何気に青春している(?)愛すべきZ級映画
タイトルだけで想像できるが、人食いカブトガニの恐怖を描く、いわゆるZ級映画。その筋のファンを決して裏切らない。
クリーチャーのグロいビジュアル、圧倒的な血糊量、そして怪獣映画と化すクライマックス。そこからにじみ出るバカバカしさやブラックユーモアも完備で、唐突な展開も爆笑&失笑しながら楽しめてしまう。
上手いと思ったのは、明朗な青春ドラマを溶け込ませていること。社会的弱者である、体や心に問題を抱えた高校生たちの想定外の奮闘に、ほんのりロマンスも匂わせて共感を引き寄せる。不覚にも(?)何度かときめいてしまった。
愛あるB級SFホラー×「KAIJU映画」リスペクト
予告編でも使われている浜辺のカップルを襲うオープニングこそ、いかにも「エクストリーム」が配給しそうなZ級映画だが、主軸となるのは車椅子の天才高校生が主人公のSF青春モノ。彼を取り巻くキャラ設定がしっかりしてるほか、プロムに向けて物語が展開。パニックと化した田舎町のバーでの『グレムリン』オマージュなど、『クリープス』あたりを思い起こさせるマニア心くすぐるB級ホラーと化す。だが、それだけで終わらなく、放射能で巨大化したカブトガニ相手のバトルは、ガチで「KAIJU映画」リスペクト。低予算ゆえにCGは酷いが、着ぐるみ愛も感じられるほか、妙に爽快感あるラストもいい。
タイトルが気に入ったならきっと好きになる
こういう映画が好きな人ならきっと好きになる映画。低予算モンスター映画、青春ホラー映画のあるあるが山盛り、ギャグもハズしまくりで、好きだからやってます感がたっぷり。とはいえ、もっとオバカにする手もあるのにそこにはいかず、心暖まるシーンもあったりして、実はちょっとユニークなモンスター・コメディを目指しただけなのかと思わせたりもする、不思議な味わいがユニーク。
特筆すべきは、全編を通しての色調。ものすごく明るいカラフルでアメリカ西海岸っぽい色調で、低予算映画にありがちな画面のくすみがない。きっちりこのジャンルの映画でありつつ、しかし色調のクオリティは死守するという心意気も気持ちいい。