インディ・ジョーンズと運命のダイヤル (2023):映画短評
インディ・ジョーンズと運命のダイヤル (2023)ライター5人の平均評価: 3.6
帽子かぶって鞭握れば、もうインディ。
80歳にもなるH.フォードだが、老骨に鞭打つ、という感じでもないのに安堵する(と言ってさほどハードなアクションはないが)。しかし、世界中を駆け巡りアルキメデスのダイヤルを求める設定や、RPGのような展開はインディに合っていないのではないか。やたらチェイス・シーンが続くばかりなのも飽きてくる。ま、その追っかけも含め、相棒は勝気な女性と非白人の少年だったり、洞窟に入るとトラップだらけ、そして毒虫うじゃうじゃといった、シリーズのお約束事はしっかりこなしているし、悪役のマッツ・ミケルセンがけっこう出ずっぱりなのもまた良しで、ラストのトンデモ展開も僕は許せる。ただJ.マンゴールドらしさは皆無だけどね。
グッとくる、老雄の挽歌
80歳を過ぎたH・フォードがインディを演じるのは、どうよ!?とも思ったが、杞憂。インディが老いたことを、ドラマはしっかり見据える。
第二次大戦から時は流れ、ベトナム戦争に対する反戦運動が起こり、ビートルズが解散に向かっていた時期。一作目の講義風景とは打って変わり、大学で教鞭をとるインディが生徒に尊敬されている様子はない。冒険は必要とされず、英雄に居場所がない時代だ。
そんな孤独が、スリリングな冒険の果てのインディの決断とその後の顛末に直結。シリーズを締めくくるうえで、この展開は巧い。スピルバーグに代わってメガホンを取ったJ・マンゴールドのアクション演出も、もちろん快調。
どこか『スカイウォーカーの夜明け』に近い感覚
ディズニー作品&ジェームズ・マンゴールド監督作になっての最終作。いろいろあって枯れまくったインディが指名手配犯になったことで現役復帰。自分が名づけた旧友の娘と相棒の少年に振り回され、再々登場のサラーに喝を入れられるお約束の旅が続くが、序盤のナチス相手の列車アクションからどうもキレが悪い。ほかにも、いろいろアップデートされておらず、だんだんムスカに見えるマッツ・ミケルセンも、前作のケイト・ブランシェットのインパクトに及ばず。洞窟探検から『レイダース』らしさを取り戻し、トンデモ展開に突入するも154分はやはり長い。なによりファンを大切にした作りは『スカイウォーカーの夜明け』に近い。
純粋な評価は別にして、インディ映画として正統な仕様と展開
映画としての冷静な評価と、観客として素直に楽しめるかどうかの基準は大きく差が開くこともある。「マリオ」に続きこのインディ新作もそこが似てるかも。
全体のムードは「レイダース」も彷彿とさせ、アクションのサービスてんこ盛り。ただ現在の大作とは明らかに違うノリに「インディ映画だ」と我に返る瞬間も。中盤のモロッコでのチェイスは、そのスピード感や視点が今っぽいけど。
そして展開は、前作「クリスタル・スカル」がSF的な飛び道具だったので今回も狐につままれつつ納得。いい意味で時代に逆らうほどの突き抜け感がインディ映画なのだ。
屈折感のある主人公を得意とするマンゴールド監督らしさは薄め。職人演出に徹した印象。
映画の魔法を実感!間違いなくインディ・ジョーンズ!
昨年の『トップガンマーヴェリック』以上に主役(=ハリソン・フォード)の年齢というものが不安材料だったこの映画。しかし、あのフェドーラ帽子と鞭とジョン・ウィリアムズのメインテーマ―が揃うと80歳のハリソンがちゃんとインディ・ジョーンズ博士に見えてくるのだから”映画の魔法の素晴らしさ”を感じました。監督を任されたジェームズ・マンゴールドはかなりのプレッシャーだったと思いますが、大仕事をやってのけました。大ネタから小ネタまで盛り沢山ですが、最初から最後まで『インディ・ジョーンズ』映画でした。多幸感たっぷり、大画面で是非。