ブラック・デーモン 絶体絶命 (2023):映画短評
ブラック・デーモン 絶体絶命 (2023)ライター4人の平均評価: 2.5
サメより無情な巨大企業。
メキシコの孤島にある石油プラントが舞台の密室サメホラー。主人公と従業員が超巨大サメ・メガロドンと闘うが、そいつはは古代アステカの自然神トラロックの顕現として設定されているわけで、食われるという恐怖ともども、人間たちに幻覚を見せ徐々に精神を苛んでいく。むろん自然破壊に対する警鐘の要素が含まれているが、まぁそこはB級ホラー、さほど深刻に突き詰められることもない。ただ主人公の息子である少年がアステカの精神と繋がっていたりするのがユニークだが、もう少し掘り下げられていればより個性的な出来になっただろう。ただ、最後までそれなりにハラハラさせるところは評価してもいいかな? ちなみに存外サメの要素は薄い。
トラロック/神の怒り
勢い止まらぬ巨大サメ映画と、プチ『バーニング・オーシャン』な油田パニックのハイブリッド。現地住民たちの不気味な反応など、田舎ホラー臭漂うなか、メガロドンの存在を「雨と稲妻の神・トラロックの怒り」と捉えるスピリチュアルなノリに突入と、前半パートの煽りに期待高まるのみ。ただ、そこまで大風呂敷を広げつつ、「監督はサメ映画にまったく興味ないのか!?」と思わせるほどの脱出サスペンスと化す。終盤の「家族でファイヤー!」な展開も空回りするほか、取ってつけたようなメッセージや無駄に死人を出さない作り手の志の高さも邪魔しており、ますます『MEG ザ・モンスターズ2』に期待してしまうのであった。
巨大ザメ襲撃に油田爆破と大盤振る舞いのはずだが…?
メキシコ湾岸に建設された油田が、伝説の巨大ザメに襲撃されて崩壊寸前となり、何も知らずに訪れたアメリカ人設計士ファミリーが絶体絶命の危機に陥る。一応、グローバル企業による環境破壊への警鐘をテーマとしている様子で、巨大ザメはいわば「神の怒り」の象徴として描かれているのだが、まあ、いかんせんストーリーにも設定にも無理があり過ぎる。アメリカ人のネガティブなステレオタイプを煮詰めたような主人公のキャラにもイライラ。しかも、肝心の巨大ザメが殆ど姿を見せないのは羊頭狗肉であろう。それにしてもジョシュ・ルーカス、昔から良い俳優だとは思っているのだが、しかし主演映画にはとんと恵まれませんな。
巨大ザメ映画でありつつ、かなり変化球
巨大ザメ映画だが、このジャンルの定番以外の要素が山盛り。巨大ザメvs人間の死闘という大枠は踏まえ、深海という領域が人間に与える原初的恐怖感を意識しつつ、そこに、巨大資本による環境破壊、海外企業と地元住民の文化的対立、主人公の倫理的葛藤をプラス。さらにメキシコを舞台に『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』でも下敷きにされたメソアメリカ文明、その雨と雷の神トラロックの伝承を絡めて、この巨大ザメは果たしてただの生物なのか、というところまで持っていこうとする。数々のアクション映画の助監督出身の『ランボー ラスト・ブラッド』のエイドリアン・グランバーグ監督が、脱出アクションを手堅く演出。