No.10 (2021):映画短評
No.10 (2021)ライター2人の平均評価: 4
本当は何も知らずに観たほうがいい
「開けてびっくり」度では近年最大の超怪作。なるだけ黙って、しかし喉から血が出るほどデカい声でお薦めしたい一本だ。オランダの演劇界から登場した異能監督、『ドレス』や『ボーグマン』で知られるアレックス・ファン・ヴァーメルダムのNo.10(第10作目)。このタイトルからも「無題」の名に相当するカテゴライズ不能の危険領域を果敢に目指したことが伝わるだろう。
物語の出だしだけ書くと、舞台俳優の男性ギュンターを主人公とする劇団内でのパワーゲームが開始される。俳優でもあるヴァーメルダムの『8 1/2』的な自意識の反映か?と思いきや――既存の説話構造からどこまで遠いところに飛翔するのか、ぜひ目撃して欲しい!
オランダの鬼才、シュールのその先へ!?
『ボーグマン』で観客を仰天させたオランダの異才ファン・バーメルダムが、よりシュールな展開で叩きつける問題作。
劇団員の間の葛藤のドラマのように映画は始まり、物語は不穏なムードをどんどん高めていく。ところが、序盤から宗教的なミッションという異物がジワジワと混ざってゆき、そこに話がシフトしたと思いきや、クライマックスでは別次元へと発展。これには、やはり仰天するしかない。
詳しく語れないのは歯がゆいが、はっきりしているのは一般的なドラマツルギーに収まる作品ではないということ。バーメルダムの新境地とも言えるかもしれない。