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HAPPYEND (2024):映画短評

HAPPYEND (2024)

2024年10月4日公開 113分

HAPPYEND
(C) Music Research Club LLC

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

平沢 薫

少年の本人にも分からない気持ちに、胸が痛くなる

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 映像の水分含有率が高い。それは、みずみずしい青春が描かれるからだけではなく、東アジアの光線による色調、どこにでもあるようでいて選び抜かれたロケーション、偶然のように見えて考え抜かれた構図、それらを入念に組み合わせて作り上げる丁寧な手つきから生じる印象かもしれない。

 幼稚園からずっと一緒に成長してきた少年2人が、高校卒業が近づいて、自分たちが別の人間であることに気づく。自分でも正体が分からない気持ちを持て余す。そんな胸が痛くなるほどのピュアな青春もの。それでいてその底には、舞台設定は近未来なのに、彼らを取り巻く状況は日本の現状そのものだという毒も、しっかり仕込まれている。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

新たな政治の季節/2020sの『日本春歌考』

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

新鋭・空音央監督(91年生)が描く近未来のヴィジョン。ミックスルーツを含む高校生達が生きているのはポスト3.11という「政治の季節」だ。100年前の関東大震災時に准えられる様な人種差別や移民排斥等のバックラッシュ。岡林信康の「くそくらえ節」使用に驚くが、全体的に想起するのは大島渚の『日本春歌考』。レベルミュージックとしての春歌がテクノ音楽に置き換わった趣と言える。

批評的視座から日本を映したディストピアSFでもあり、都市空間(主に神戸ロケ)の建築的な捉え方も秀逸だが、核は青春/友情の瑞々しい祝祭と惜別。前衛の洗礼を色濃く受けつつ、ウェルメイドな設計で作品の輪郭が支えられているのもユニークだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

近い未来を舞台にしつつ、ノスタルジーも併せ持つ奇跡の青春映画

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

時代は明言されないが、街の広告や監視システムなど風景は“遠くない未来”。なのに主人公たちの佇まいや言動、大人への反発と主張、何より仲間との関係性は、ひと昔前、80〜90年代の青春映画の手触り。この不思議なバランスと、出会った時・場所が違ったら…という友情の真理が最後まで心を鷲掴みにする。最も近い感触は橋口亮輔『渚のシンドバッド』かも。
監督は初の長編劇映画だが、最も感銘を受けるのは音のセンス。切ないメロディを挿入するタイミング、“無音”が訴える力など、お父さんの影響やDNAも脳裏をかすめつつ、映画作りを真摯に学んだ賜物か。
演技初挑戦の俳優たちからも、慈しみたいほどの表情や個性が引き出された。

この短評にはネタバレを含んでいます
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