ナイブズ・アウト:グラス・オニオン:映画短評
ナイブズ・アウト:グラス・オニオンライター6人の平均評価: 4.5
前作に負けず劣らず、旨味たっぷりのミステリー
軽妙なミステリーを現代劇に落とし込んだ『ナイブス・アウト』はエンタメ映画として新鮮だったが、この続編はますます快調。主人公である名探偵ブノワの視点で描かれる、大胆なストーリー展開が目を引く。
遊びの殺人ゲームの謎解きを終えたと思いきや本物の殺人事件が起こり、そこから過去にさかのぼってブノワが本案件に関わった舞台裏を明かし、さらにヒネリを加えたつくり。トリッキーな映像や伏線も生きて見入ってしまう。
真実の追求と司法の追求が必ずしも一致しないことについても考えさせるオリジナル脚本。ここまでしっかりしたものを作ってしまうジョンソン監督の才腕に、改めて惚れた。
クソみたいな現実に中指立てるようなラストが爽快
ダニエル・クレイグ演じる“世界一の探偵”ブノワ・ブランがNetflixで帰ってきた! イーロン・マスク風の大富豪と、彼にカネの力で手懐けられた怪しいセレブたちが孤島のお屋敷に集められたところから事件が始まる。練り上げられた構成と怒涛の伏線回収が気持ちいいミステリー。何よりキャストもロケーションも豪華で目がずっと楽しい。お正月に劇場で観たい映画だ。謎解きも笑いどころもたくさんあるし、何よりクソみたいな現実に中指を立てるようなラストが爽快。訳知り顔で現実の不都合を受け入れるばかりじゃつまらない。やっぱりフィクションはこうでなくっちゃね。
名探偵の帰還
今となっては逆に新鮮なクラシカルなミステリー。古典から原典を求めていないオリジナル企画の映画化というのは今のハリウッドを考えるとなかなかすごいことですね。ライアン・ジョンソンはこのくらいの枠組みが巧く活きる感がありますね。相変わらず豪華キャストが集結して、胡散臭さ抜群のキャラクターを嬉々として演じています。前作と変わって今回は温かいリゾート地が舞台なので、雰囲気がガラッと変わってまた新鮮さを感じられます。ダニエル・クレイグの名探偵=ブランは新たな当たり役ですね。3作目もあるとか期待大です。
"映像"で描かれる名探偵の謎解きが今回も楽しい
"映画"ミステリならではの演出の妙は、前作に続いて健在。名探偵が容疑者全員の前で語る謎解きを、時間を戻して"映像"で見せて、そうかあの時のアレはそういうことだったのか!と驚かせてくれる。
その緻密な謎解きに加えて、現代社会をチクリと皮肉る面白さも前作と同じ。前作は富裕層による移民差別が描かれたが、今回は今どきのセレブたちがネタになっている。
そのうえでやはり魅力的のは、監督自身も認めているアガサ・クリスティのオマージュ大会。豪華な船の旅。孤島に集められたクセ者揃いの人々。全員にある殺人の動機。大富豪が建造した奇妙なデザインの館。クリスティの定番が次々に繰り出されるのも楽しい。
ミステリー部分も緻密&わかりやすく細かいネタがいちいち楽しい
どんよりしたイギリス郊外から一転、陽光キラキラなギリシャのリゾートが舞台になり、見た目のゴージャス感だけで気分が上がる。しかも超金持ちが島に人々を集める設定なので、最上級のおもてなし、目がくらむほど豪華な美術を愛でるだけで延々と楽しい。
クレイグの探偵は、独特のコミカルさと人間くささ、鼻持ちならなさの総合魅力で「007」後の完璧な当たり役へと進化した。
全員が怪しい状況、閉鎖空間、引っ掛けや伏線の張り方、友情ドラマの切なさ、わかりやすい謎解きまでクリスティ的な王道ミステリー感で安心して観ていられ、犯人発覚後の劇的さにも唖然。
名前だけも含め一瞬登場のセレブが次々。本作が追悼になった人には涙…。
冒頭から前作とは違うと感じさせる
1作目よりスケールアップしたこの続編は、ロケーションやプロダクションデザイン、衣装がとても華やか。出だしから「前作とは違う」と感じさせ、実際、もっと凝った形でストーリーが展開していく。コメディも前作よりたっぷり。ただ、抜群に面白く、すぐにまた見てしまった前作と同じだけの興奮はなかった。今回もキャストは豪華。主演のダニエル・クレイグ以外ではジャネール・モネイとエドワード・ノートンが最も美味しいが、キャスリン・ハーンやレスリー・オドム・Jr.は才能の見せ場を十分与えられていない感じも。それでも、すごく楽しい映画であることは確か。製作がすでに決まっている3作目を見るのが今から待ちきれない。