サユリ (2024):映画短評
サユリ (2024)ライター4人の平均評価: 4
本気で怖くて面白くて痛快なJホラーのニュータイプ
平凡な家族が中古の一軒家へ移り住んだところ、その家に取り憑いた謎の悪霊「サユリ」に襲われる…という前半はありきたりなJホラーという印象だが、しかし中盤で一家の痴呆症お祖母ちゃんが覚醒した瞬間からテイストが急変し、「生きている人間の恨みを思い知らせてやる!」とばかりに猛反撃へ転じていく。これはまさに目から鱗の面白さ。しかも、単に奇を衒っただけの変化球的展開ではなく、そこには「生きることと真摯に向き合うことで世の理不尽を乗り越えろ」という強烈なメッセージが込められている。『ベスト・キッド』的な祖母・根岸季衣と孫・南出凌嘉のコンビは好演。陰惨な残酷描写に一切の手加減をしていない点も評価したい。
悪霊に勝つ方法はコレしかない!?
原作を読まずに観たが、前半から後半への転調に仰天。ありがちなオカルトホラーと思いきや、まったく異なる方向へと転がっていくのは『貞子vs伽椰子』の白石監督らしさではあるが、そこからさらに突き抜けるのが嬉しい。
霊が住む屋敷に越してきた家族を見舞う惨劇を徹底して突き詰めてドン底に突き落とす。そんな前半から“こんなことに負けてられるか!”という闘志の後半へ。この振幅の大きさが、見進めるほどに生きてくる。
極力内容を知らずに観て欲しいので詳しい説明は省くが、根岸季衣の怪演と南出凌嘉の熱演が相まって、とてつもないブレイクスルーを見せつける。「命を濃くしろ!」というセリフが頭から離れない。快作!
今度も、バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!
舞台が一戸建ての明らかに『呪怨』な前半のJホラーパート。既視感がありながら、梶原善から森田想まで、被害者一家を演じるバラエティに富んだキャストが魅力的に映し出される。とはいえ、見せ場は『貞子vs伽椰子』の白石晃士監督ならではの後半パート。今回も「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!」なノリで、前半ではボケまくっていた婆さんが覚醒。ヘタレな孫の根性を叩き直し、いざバトルフィールドへ!! 『漫☆画太郎SHOW ババアゾーン(他)』から20年――。根岸季衣演じる最恐ババアは、さらにヴァージョンアップしており、『フロム・ダスク・ティル・ドーン』な二部構成を盛り上げてくれる。
幽霊屋敷系かと思ったら、、、の変化球ホラー
引っ越した家で次々に怪異が起こる、という王道のホーンテッドハウス系ホラーで始まりながら、途中から急角度でいきなり大変貌。元気が出るホラーという、とんでもない世界に突入していく怪作。笑えるホラーを描いてきた2人、異色漫画家の押切蓮介と、原作に惚れ込んだ「オカルトの森へようこそ」の白石晃士監督という組合せもいい。
もちろん、王道のホラー演出で怖がらせ、人が死ぬ描写はかなり過激。そこに、主人公の中学生少年と同級生のほのかな恋をプラス。さらに、怪異に対抗するのが、認知症から覚醒した主人公の祖母なところが痛快。根岸季衣演じるこの人物が魅力的で、彼女が語る名言の数々には、深く頷くしかない。