マッドマックス 怒りのデス・ロード (2015):映画短評
マッドマックス 怒りのデス・ロード (2015)ライター8人の平均評価: 4.8
いろんな意味でトーキー映画の究極。
同じ道を往って帰るだけなのにアドレナリン沸騰したままの2時間。「映画って結局これでいいのだよ!」と感無量、それだけで泣けてくる。超絶的で狂ったアクションの絶え間ない連続にストーリーなんて無いが如しだが、終盤にはそれまでの展開…独裁者(『DUNE』や『エル・トポ』を思わせるホドロフスキー印!)に反逆する女戦士、愛すべき白塗り特攻隊青年と赤毛の美女、「鉄馬の婆さん」らの怨念が合わさって沸々と煮えたぎり(ある意味最強のガーリー・アクションだ!)、それまでは狂言回しに過ぎなかったマックスもその想いに命を賭けるに及んで「情」の部分にもガンガン訴える。これが今後の映画界のカンフル剤となるのは間違いない!!
近年稀に見る最狂アクションに笑いが止まらず
全編とにかく走る!走る!走る!砂漠の荒野を駆け巡る装甲車やバイクの猛烈なカーチェイスを、文字通り縦横無尽に捉えるダイナミックなカメラ。この狂ったような疾走感と終末叙事詩的な映像美に、最後の最後まで圧倒されっぱなしの2時間だ。
ストーリーは徹底的にシンプル。そんなこと分かりきっているだろうと言わんばかりに、必要最小限の情報とセリフしか与えない潔さもいい。
30年ぶりにシリーズを復活させたG・ミラー監督の吹っ切れ具合は半端なし。巨大スピーカー搭載のトラックで火を吹くギターをかき鳴らす男なんて、ぜーぜん意味が分からないけど凶悪でステキ。もう、アドレナリン噴出しすぎて笑いが止まりません。
今度のマックスは、実は脇役!? しかもがっかり系。
荒廃した世界で怒りと孤独を抱えて生きる元警官マックスがモラルにしがみつく姿が鮮烈だったン十年前。リブート版もジョージ・ミラー節炸裂だ! 大型トラックや改造車、バイクが入り乱れ、エアリアルを加えたカーアクションは興奮度MAX。ワイスピの影響? 石油の一滴が黄金に値するシリーズの世界観は無視だが、そこは目をつぶろう。アクションは本当に見せる! ただ不満が残るのはトム・ハーディー演じるマックス。どこかで見た演技だし、徹底的に受け身キャラなのが解せない? カルト教祖的な支配者にNOを突きつけるフュリオサや美女軍団に積極的に加担する男じゃなきゃ、マックスじゃない。あんたには、がっかりだよ。
ハイテンションのマッドな世界はマックスを超えた!
20世紀の『マッド・マックス』三部作はタイトルどおり主人公マックスが狂気的なハンドルさばきを披露し、観客を熱狂させた。30年ぶりに甦ったシリーズ最新作は、これとは様相が異なるが“マッド”な映画であることに変わりはない。
白塗り姿の兵士たちが疾走する車から車へと飛び移るバトルはクレージーとしか言いようがないし、キャラクターのフリーキーなビジュアルも強烈。爆音ノイズが加わって、ハイテンションも加速する。
“正気を失ったのは俺か、世界か?”というマックスの独白で映画は始まるが、おのずと答は見えてくる。ここはブレーキ不要の狂走の世界。これほど刺激に満ちたアクション体験は、そうそう味わえない。
誰もが狂わざるを得ない荒野を走り続ける、命懸けの純粋活劇
いきなり秩序の失われた荒野に引きずり込まれる。生き残りを懸けた逃走と戦闘。美女と野獣とガンとマシン。退廃・欲望・絶望に僅かな希望。全編クライマックス。VFXを意識させない身体を張ったアクションの連続に全身の血がたぎり、撮影監督ジョン・シールが切り取る紅蓮の大地に魅せられる。あまりにもシンプルな構造は“純粋活劇”と呼びたいほど。「希望は持たぬことだ。心が壊れたら残るのは狂気だけだ」という呟きが心に染みる。もはや終末後がファンタジーじゃなく、現実のものとなった今を生きる我々の神話として切実だ。何十年も企画実現のチャンスを待ち続け、70歳にして最高にイカれた映像をぶちまけたジョージ・ミラーに乾杯!
この"見る音楽"は太古のDNAを刺激する!
「マッドマックス」とは、舞い上がる赤い砂のことである。「マッドマックス」とは、それぞれの意匠を凝らした改造自動車群が、大地をどこまでも爆走することである。「マッドマックス」とは、アドレナリンの分泌と、高鳴る胸の鼓動のことである。本作はそれを高らかに宣言する。シリーズ前作から30年後の今、このシリーズの生みの親、ジョージ・ミラー監督自身がそう宣言するのだから、ただ平伏すしかない。さらに鼓動を速めるのが、ジャンキーXLによる音楽。顔や身体に模様を描いた戦士たちが、自動車に積み上げた打楽器を激しく打ち鳴らす。ギターを鳴らすと、楽器が火を吹く。原初的な部族の音楽が、古いDNAを刺激する。
御託を並べる暇があるなら、劇場に直行!
あの『ワイルド・スピード』が『M:i』的ストーリー重視に走ったなか、30年ぶりのマックス復活が、ここまでド直球なアクション映画だったことは驚愕以上に、興奮でしかない。ぶっちゃけ、一本道を行って帰ってくるだけ。そこで描かれるのは、これでもか、と連続するアクションと、いい男といい女とフリークス! 気になる『マッドマックス2』との比較だが、御大ジョージ・ミラーは70歳にして、しっかり2015年の映画のリズムを作っただけでも、『2』を超えたといえる。メル・ギブソン不在とか、邦題が『ランボー』みたいとか、マンウィズの日本版主題歌が…とか、御託を並べる暇があるなら、劇場という名のデス・ロードに直行だ!
気持ちは星10個。
興奮・陶酔・失禁脱糞の勢い……を通り越して、もう死ぬんじゃないかってくらい気が遠くなった。『マッドマックス2』の影響から生まれた『北斗の拳』を、さらに本家がフィードバックして極限までアップグレードしたみたいな。まさか『ワイルド・スピード SKY MISSION』よりハイなアクションを今年中に観られるとは!
話題の炎を噴くダブルネックギターは「地獄のさけび」というかKISSのジーン・シモンズ的で、センスはまんま70年代。あるいは『ヘアー』世代の本物の絶倫。ジョージ・ミラー監督(1945年生)は『ベイブ』&『ハッピーフィート』の家族サービスを経て、狂い咲きデス・ロードへぶっちぎった。絶対必見!