L.A. ギャング ストーリー (2012):映画短評
L.A. ギャング ストーリー (2012)ライター4人の平均評価: 3.5
正攻法に好感は持てるが、もっとベタでイイ
権力を味方に付けた巨大な敵に、少数精鋭で立ち向かう痛快さは『アンタッチャブル』をほうふつさせずにおかない。が、願わくばキャラクターに、感情移入できる要素が欲しい。ジョシュ・ブローリンのコワモテ具合や、ライアン・ゴズリングのクールネスのようにキャラクターが立っているだけに、もっとベタでも良かった。とはいえ、ギャング映画を成立させることが困難な現代に、正攻法でこのジャンルの娯楽性に切り込んできた姿勢には好感が持てる。
意外な軽妙さは、やはり“『ゾンビランド』監督の新作”
主要キャストに旬な男、ライアン・ゴズリングがいるものの、ジョシュ・ブローリンにロバート・パトリックがいるだけで、普通のギャング映画にならないことは察するはず。とはいえ、「そこで笑わせる?」というギャグが散りばめられ、ハードボイルドといいがたい予想外の展開には驚き。そんな軽妙さや、全米銃乱射事件により規制することになったバイオレンス描写が、やっぱり“『ゾンビランド』監督の新作”という枠から出ない結果に。おかげでショーン・ペンの力の入ったヒールっぷりも「『アンタッチャブル』のデ・ニーロを演りたかっただけ」にしか見えないし、ファムファタールになるはずだったエマ・ストーンも「『ゾンビランド』繋がりで出ただけ」としか言えない。そんなわけで、『アウトレイジ』を見るような軽い心構えがいちばん楽しめる一作。
暴力VS暴力のガチ勝負
実在の大物ギャング、ミッキー・コーンとLA市警ならず者部隊の死闘を描く。「アンタッチャブル」を彷彿とさせる内容は特に目新しくもないのだが、その弱点を補って余りあるのが見事なキャスト陣。親父よりもチャールズ・ブロンソンに似てきた主演ジョシュ・ブローリンも渋いが、なんといってもミッキー役ショーン・ペンの狂犬ぶりが圧巻。この上ないくらいのゲス野郎でありながら、どこか憎めない魅力があるのは、エドワード・G・ロビンソンなど往年のギャング映画スターにも匹敵する。主人公の妻役ミレイユ・イーノスも適役。ドラマ「The Killing」といい、これといい、生活感のある優れた女優だ。スタイリッシュを気取らず、暴力VS暴力のガチ勝負でキメた演出も痛快。これぞギャング映画。
力を抜いて観れば適当に楽しいギャング映画
『ゾンビランド』のルーベン・フライシャーが監督なので、最初から“そういう映画”と思ってポップコーン片手に観れば、笑いのポイントも押さえていて十分楽しめる。
間違っても『L.A.コンフィデンシャル』のような重厚なギャングストーリーと思って観てはイケナイ。もともと役者がそろっている映画だが、キャラを立たせる監督の手腕は秀逸。
ライアン・ゴズリングのスタイリッシュなスーツの着こなし、ショーン・ペンのこれでもかってほどの悪人顔、ジョシュ・ブローリンとニック・ノルティを交互に映して笑いをとる……とか、ツボにハマるとそれなりに楽しい。