ジェーン (2016):映画短評
ジェーン (2016)ライター3人の平均評価: 3
不器用で寡黙な男ジョエル・エドガートンがカッコ良し!
かつて最愛のわが子を奪い、今また家族の命を危険にさらす西部の無法者集団を相手に、ナタリー・ポートマン扮する女性が決死の戦いを挑む。度重なるキャストやスタッフの降板劇で制作発表から完成までに4年近くもかかった作品が、ようやく日本でも劇場公開となった。
ストーリー的にラクエル・ウェルチ主演の『女ガンマン・皆殺しのメロディ』を彷彿とさせつつ、仕上がりはイーストウッドの『許されざる者』にも通じるようなリアリズムが貫かれた本格西部劇。新鮮味には乏しいものの、理不尽な暴力に対して反撃に転ずるヒロインの勇姿は映画的カタルシス十分だし、助っ人役ジョエル・エドガートンの朴訥としたカッコ良さにも惚れる。
派手な娯楽作ではないヒロイン・ハードボイルド
突然のリン・ラムジーの監督降板により、撮影一日前に演出を務めることが決定したギャヴィン・オコナーは、そりゃあ慌てただろう。が、そんなドタバタがあった割にはウェルメイド。
主演とともに製作を務めたナタリー・ポートマン主導ゆえに、西部劇とはいえフェミニズムが押し出されるのは必然。オコナーは耐えて戦うヒロイン像に焦点を絞りつつ、ハードボイルドな魅力を宿らせる。
西部劇らしい派手なガンアクションやカタルシスを期待すると肩透かしを食らうが、ヒロインと昔の男とのメロドラマを含めて抑制が効いており、わざとらしさを感じさせないのがいい。地に足のついたドラマ作りは買いだ。
女性が主役の西部劇?とバカにせずに見て!
暴力や奪略、虐殺がまかり通っていた無法時代の西部における女性といえば開拓農民の妻や酒場女くらい? 選挙権はもちろん無いし、悪漢の被害に遭っても泣き寝入りするしかない。そんな時代に家族を守るために立ち上がる女性ジェーンの戦いを描く、一種のフェミニズム映画に仕上がっている。もちろん細腕を支える元婚約者という存在がいるが、戦いの主役はあくまでもジェーンだ。彼女がかつて受けた屈辱や奪われた人生への怒りをバネにすっくと立ち上がり、極悪人に裁きを下すシーンは痛快。ギャビン・オコナー監督はキャラクターの背景や心模様をしっかりと描き出すのに長けていて、観客の共感力を高めてくれる。