サンローラン (2014):映画短評
サンローラン (2014)ライター2人の平均評価: 3
サンローランに特別な思い入れがなければ辛いかも
イヴ・サンローランの伝記映画といえばジャリル・レスペール版が昨年日本でも公開されたが、こちらはたまたま同時期に制作されたベルトラン・ボネロ版である。
サンローランの半生を時系列でドラマチックに追ったレスペール版に対し、ボネロ版は最盛期の10年間と晩年の彼に焦点を当て、あえてストーリー性を排除しながら人間サンローランの素顔を多角的に捉えていく。シーン前後の関連性も時間軸も基本的にバラバラ。試みとしては面白いものの、正直なところ抽象的で分かりづらい。
とりあえず、『家族の肖像』以来40年ぶりとなるヘルムート・バーガー&ドミニク・サンダの共演(直接的な絡みはないけど)は映画ファンとして嬉しい。
このキャスティング、超豪華!
まず、キャスティングが豪華。サンローラン役は「ハンニバル・ライジング」のギャスパー・ウリエル。その長年の公私に渡るパートナー役は、ダルデンヌ兄弟監督作の常連ジェレミー・レニエ。主人公の放埒な愛人役は、フィリップ・ガレル監督の息子ルイ・ガレル。晩年の主人公役は、ヴィスコンティ映画の美男俳優ヘルムート・バーガー。主人公の母親役は「暗殺の森」などのベルトルッチ映画のドミニク・サンダなのだ。そして、主人公の苦悩が深まるのにつれて、画面の上で、彼の作品群の形と色彩と質感が、その輝きを増していく。昨年公開の同題材映画はサンローラン財団の公認、こちらは非公認なので、より自由に題材の魅力を描いている。